目の前で
にこっと笑って
挨拶をする彼女に
俺は思わず
握ってたペンを落とした




あまりにも
その笑顔が…



優しくて

綺麗だったから…











ー ガタッ!!


直「ーッ 痛ッ
 あ、ごめんなさい 笑」

ゆ「あ…   あのっ  大丈夫ですか?」


動揺しながら立ち上がると
膝をテーブルに強打しながら
落としたペンを拾う

ヤバイ… ダサいぞ俺…



直「ハハ 笑
 大丈夫です 笑
 すいません… // なんか 笑
 
 ちょっと、
 そこ座って待ってて下さい」

ゆ「えっ?!
 あ…  はい…  」




慌てて部屋を出ると
近くにいたスタッフの木下が
ニヤニヤしながら
こっちを見てる


木「どうしました? 笑
 だいぶ様子おかしいですよ? 笑」

直「… いやっ
 その、ほら…
 コッ コーヒー取りに来たんだよっ!」

木「直人さんが? 笑
 自分で? 笑

 コーヒーなら俺が持って行きますよ?
 新人さん、一人にしたらダメですって 笑」

直「いや、自分で持ってくから…
 ほら、仕事して! 」

木「…  あの人、可愛くないっすか? 笑
 ね? フワフワしてるでしょ? 笑
 直人さん、風紀乱さないで下さいよ〜 笑」

直「おまっ!! おまえなぁ〜!
 そんなんじゃないからっ!」



木下を軽くどついて
コーヒーを淹れながら
とりあえず自分を落ち着かせる

どうした、俺…

フワフワって…


すっげー分かる!!!


何だ、あの笑顔は!
フワってしてたぞ…
間違いなく癒し系だぞ…

髪型もメイクも
雰囲気も…
なんか全部柔らかくて
フワフワしてそうじゃん…


待てよ…

俺、笑顔フェチなのか?

たしかに
花の笑顔が好きだったしなぁ…

今もアイツが笑うと
嬉しくなっちゃうし…


「うあーっ!!
ダメだ ダメダメ!」


思わず口に出して
ブンブンッと頭を横に振ると
さっさとコーヒーを淹れて
部屋に向かった

扉の前で、一回深く深呼吸…


直人! しっかりしろ!



直「お待たせしました… 」

ゆ「あ、はい…
 あの…     足は、大丈夫ですか?」

直「あぁ 笑
 大丈夫 大丈夫 笑
 すいません、お見苦しい所を
 お見せしてしまって… 笑」

ゆ「いえ…
 わたしは、大丈夫なので…」

直「あ、よかったら
 コーヒーどうぞ…  」

ゆ「ありがとうございます。」

直「では…
 えー…っと 
 秋山さん? でよろしいですよね?」

ゆ「はい。 秋山ゆきです。」

直「面接でも話したとは思うんですが
 ここの総合的なデザイン、プロデュースと
 僕がやってるので
 少しお話聞かせて下さい。
 前職は…
 舞台関係だったんですよね?
 主に、どんな感じだったか
 お伺いしてもいいですか?」

ゆ「はい…
 企画デザイン部で8年ほど
 衣装のデザインを担当していました。

 脚本に全て目を通して
 その演出に合った衣装を
 一からデザインして… 」

直「一から?! 
 脚本、全部読むんですか?!」

ゆ「勿論です!
 全部、読みます!
 その物語の情景や人物像…
 全てを思い浮かべながら
 デザインを考えていくんです…

 あ、もちろん演出家の方の意向に
 合わせてですけど… 」


そう真剣に話す表情は
時折、凄く切なそうで
どこか懐かしそうに見えた…

だからこそ
不思議だった


舞台衣装の世界から
なんでアパレルなんだろうって…


直「なぜ、退職を?」

ゆ「…   そう…なりますよね? 笑」

直「あ…  いやいや…
 言いたくなければ!
 うん、大丈夫なので… 」

ゆ「…そうですね。
 いつか、お話できる時がきたら…
 申し訳ないです…」


はい、気になるぅー

でも、そんな困った顔されたら
絶対聞けないよね

だけどさ
余計気になるのが人間だよね


ゆ「あの…
 わたし、一生懸命頑張りますので…
 
 これから、よろしくお願いします!」

直「こちらこそ、よろしくお願いします!
 
 でも、あれだね…
 俺も本業は
 ステージに立つ仕事だからさ 笑
 いつか、俺らの衣装見てみてよ 笑」

ゆ「あ!!  そうですよね!
 是非、見てみたいです!

 あ…//   すいません//
 興奮しちゃって…

 わたし、ステージ衣装を見るの
 凄い好きなんです…
 舞台とまた違って…
 装飾がキラキラしてて
 本当に綺麗で…  」

直「あれ、あんまり付いてると
 重いんだけどね 笑」

ゆ「なるほど! 確かに、そうですね…
 そっかぁ…
 何か少しでも軽くて、
 見栄えのいい素材あったかなぁ…

 んー… 」


この子は
本当にデザインの仕事が
好きなんだろうな…

なんか可愛いし
笑顔フワフワだし
真面目だし
きっと、大丈夫…

こんなにいい子が入ってくれて
本当に良かった…



直「…  ハハハ 笑
 めっちゃ、仕事人間じゃん 笑
 秋山さんて面白いね 笑」

ゆ「え?!
 アハハ   そうですかね? 笑
 
 
 あ! そうだ!
 
 あの…
 お伺いしたい事があって…」

直「うん、何?」

ゆ「少し、プライベートな事なんですが…」

直「えー? 何よ?何よ? 笑
 展開早くない? 笑
 プライベートだなんてさぁ〜 笑」

ゆ「展開って… 笑

 あの、直人さんと同じグループの
 登坂さん… 」

直「はい、きましたー 笑
 臣のファンですかー
 岩ちゃんじゃなくて臣ねー 笑」

ゆ「いや、あの
 そうゆうんじゃなくて…」

直「え? 違うの?
 じゃあ、臣がどうしたの?」

ゆ「登坂さん、ご結婚なさってるじゃ
 ないですか…   

 それで奥様って…   
 美容師さんだったりします?」




え…




前言撤回!!


いい子じゃない…


どこまで調べてるんだ??


危険人物じゃねーか!!