年が明けて…

正月休みも兼ねて
殆ど在宅で仕事して
なるべくのんびりと過ごしてた


臨月の花に
なるべく負担をかけないように
育児も家事も
率先してやったりして…

自分で言うのもあれだけど
案外サマになってきて
楽しかったりする

自分なりにこだわりなんかも
色々出てきて
たまに花に鬱陶しそうにされるけど…


それもそれで
俺の中では幸せな日常で…



今日も花がサロンに新年の挨拶に
行くって言うから
心配だったけど見送って
俺は家で仕事をしながら
洗濯したり、掃除したり…

春は朝から母ちゃんが迎えに来て
俺の実家に遊びに行った


春が居ないからか
スムーズに片付けが進むけど
やっぱり久しぶりに
家でひとりだと少しだけ
寂しく感じる…



キッチンに立って
スマホをいじりながら
コーヒーを少し入れると
冷蔵庫から牛乳を出そうとした時
花から着信…


そろそろ帰ってくるのかな?



電話に出ると
花の発言に思わず手に持ってた牛乳を
落とした




臣『あっ!! ヤバっ!!』

花『何?! 何の音?!』



牛乳こぼすと
花はめちゃくちゃ嫌がる…

だけど、そんなことより
俺の頭の中は
焦りでいっぱいだった



遂に産まれるのか…


直ぐ行かなきゃ…


とりあえず着替えて
花に言われた荷物持って…


電話を切った後、ダッシュで
クローゼットを開けて
入院用の鞄を手に取ると
着替えてニット帽を深く被った



マネージャーに鬼電して
すぐに来てと頼み込むと
忘れ物がないかだけ確認して
玄関を飛び出す…



花は、大丈夫か?

痛いって言ってたよな…


エントランスでマネージャーを
待つ間も気が気じゃなくて
ウロウロするばかり…

落ち着いてなんていられなかった







臣「着いた?!」



マネージャーからの着信に
慌てて外に出ると
急いで車に乗り込んだ



マ「どこ行けばいい?」

臣「花の店!!
 急いで!!」

マ「了解っ!!」

臣「…大丈夫かな?
 あー…   本当どうしよ…
 めっちゃ緊張してきた…」

マ「珍しく緊張するんだ 笑」

臣「するわっ! 笑
 でも、楽しみだなぁ…  マジで…」

マ「あ…  でも、今って立ち合い出来る?
 確か感染防止でダメじゃない?」

臣「って思うでしょ? 笑
 俺だよ? 出来ないと思う?」

マ「イヤイヤ、流石にダメでしょ? 笑」

臣「ハハ 笑」

マ「まさか…
 うわぁー…    大人の世界だわぁ〜…
 怖ぁ〜っ 笑」

臣「まあまあ…    
 聞かなかった事にして? 笑」

マ「奥さん知ってんの?」

臣「ん? 知らないよ 笑
 ビックリさせたいじゃん?
 
 俺ね…

 春ん時、アイツひとりで産んだから…
 今回はそんな思いさせたくないんだよね…」

マ「あー…    そっか…
 そうゆう事ね… 」

臣「俺は男だからさ
 子供産む大変さも、痛みも
 知りたくても知ること出来ないけど
 絶対大変な訳で…

 命懸けって言うし…

 だからせめて、傍についてたいし
 出来ることは全部してやりたい…

 あいつの不安は
 全部取り除いてやりたいんだよね…」

マ「ちゃんと、旦那さん
 やってんだな…  臣  笑
 良い夫じゃないの 笑 」

臣「ハハ…  笑
 だといいけどね… 笑」

マ「ひとまず、仕事の事は忘れて
 暫くは奥さんと子供の事だけ
 考えればいいよ… 」

臣「言われなくても、そうしますー 笑」



少し車で走ると
花のサロンの前に到着


車から降りると
スタッフに荷物を持ってもらって
花が中から出てきた




臣「大丈夫か?!」

花「うん…
 ちょっと、痛くなってきた…」

ス「あっ! これ、荷物ですっ!!」

臣「ありがとうございます!」

花「ありがとね…
 お店、お願いね…
 連絡するから… 」

ス「はい! 任せてください!
 赤ちゃん楽しみにしてますっ!
 頑張って下さいっ!」

花「うん…   ありがと…」



スタッフの子に頭を下げて
花の腕を掴んで
ゆっくりと車に乗せた


だいぶ痛むのか
呼吸を整えながら
辛そうにする花の手を
握る事で精一杯の自分が
急に情けなくなった





花「すいません…  
 お車出してもらって…」

マ「いーのいーのっ
 大丈夫…?  今、間隔は?」

花「10分… くらい?
 少しすれば落ち着くかな…」

臣「花…   痛い?
 どうして欲しい…?」

花「ん…  大丈夫…
 
 少し、楽になってきたから…
 また直ぐ痛くなるけど…」

臣「そっか…
 
 あと、どれくらいで着く?!」

マ「15分くらいかな…
 臣、腰さすってやれ」

臣「あ…  腰ねっ

 花? これで平気? どお?」

花「うん…  ありがと…
 フゥ…     

 あ、臣…」

臣「ん? どした?」

花「牛乳、片付けた?」








あ…


やっば!!!