久々に来たな…
事務所の応接室…
最近は、ずっと家にこもってるから
事務所に来るのも
本当に久しぶりで
中の様子に驚いた…
感染対策で、あちこちに
アクリル板があって…
至る所にアルコールが設置されてる…
勿論、今居るこの部屋も
窓は全開で
テーブルの真ん中には
アクリル板が置かれていた
そして
まさにその板一枚挟んだ反対側に
俺がこの世で一番嫌いな人物が
下を向いて座ってる
隆「… で?
俺に、わざわざ会って
今更何がしたいんですか?
和解もとっくに成立してるし
会ってまで話す事ないですよね? 」
哲「…
ちゃんと、謝りたくて…
謝罪してなかったから… 」
隆「謝るのは、俺じゃないでしょ? 笑
他に居るじゃないですか…
あなたが、きちんと謝罪しなきゃ
ならない人が… 」
哲「…由香には
由香には、ちゃんと謝る…
明後日、約束してるんだ…
隆二…
本当に、申し訳なかった…
由香の事も…
隆二を巻き込んだことも…
本当に、すまない… 」
隆「…
何で… 何で、謝ろうなんて
今更思ったんですか?
捕まって、更生したんだって
わざわざ知らせたかった訳? 」
哲「… そういう訳じゃ…
隆二…
俺さ、ずっと昔っから
おまえのことが嫌いだった…
おまえは、常に楽しそうで
いっつも仲間に囲まれて…
その上、由香も隆二の傍に居た…
俺は由香が好きだったからさ
本当に嫌だったよ…
だから、二人が別れた時は
マジでチャンスだと思って
必死にアイツの事口説いて…
だけど、やっと手に入れても
俺の中でずっと隆二の存在がチラついて…
由香がどれだけ、隆二を好きだったか
知ってたからさ…
ずっと、怖かったんだ…
いつかまた、由香は隆二の元に… って
だから、アイツを縛るしかなかった
絶対に俺から離れられないように…
自分の所有物にしたかった…」
隆「最低だな… 」
哲「ああ…
自分でも分かってる…
だけど、今は…
本当に申し訳なかったと思ってる…
アイツは、純粋に俺を好きになってくれたのに
俺は大事にしてやれなかった…
怯えさせてばっかりで…
あんな傷まで負わせた…
それに…
由香にとって一番大事なもんを
俺は取り上げた…
おまえと、由香を引き裂いて
満足してたんだ… 」
隆「ああ…
大っ嫌いな俺と、由香を離れさせて
それで良かっただろ…
結局、あんたは由香を縛ったままで…
あいつの幸せなんて
少しも望んじゃいないんだから…
だったら、もうほっといてくれよ…
由香にも会わないでくれ…
謝ったって、何も得られない…
あんな事された相手に
会いたいわけないだろうが…
由香に対して詫びる気持ちがあるなら
これ以上、アイツを苦しめないでくれよ…」
哲「本当に、すまなかった…
だけど…
由香を苦しめる気なんてないんだ…
もう… 自由になってほしい…
隆二… ごめんな…
おまえの事、一方的に妬んで
憎んで… 」
隆「もう、いーよ…
あんたは謝った
これで、いいだろ?
帰ってくれ…
もう、二度と会う事もないから…」
何なんだよ
やっぱり
会うんじゃなかった…
謝って貰ったって
結局、満足するのも
スッキリするのも
あんただけなんだよ…
哲「隆二…
今日は、謝罪以外にも
ちゃんと伝えたい事があったんだ…
俺は…
今は、本気で由香の幸せを願ってる…
だから… 和解条件…
取り下げるよ…
由香の事、幸せにしてやってくれ…
今まで本当に
申し訳ありませんでした… 」