花ちゃんとカフェで別れてから
直ぐにスマホを見て
LINEに気づく


柚??




柚  "由香の様子がおかしい!!
 あたし、仕事だから
 隆二フォローして!!
 ちゃんと、話聞いてあげて!!"




は…?

様子がおかしいって…

あいつ、普通だったけど…



歩くスピードを上げて
急いで家に帰った



隆「由香!! … あれ?」


ダッシュで帰ったものの
家の中に
由香の姿はなくて…

慌てて、辺りを見渡すと
少しほっとした

荷物は、ある…


出かけてるだけか?



スマホを開いて
すぐに由香にかけた



由『はい…  』

隆『由香? どこに居るの?』

由『あ…   もう、家?
 今、あと少しで着くよ?』

隆『そっか…
 俺も、今着いたとこ…
 待ってるわ… 』

由『うん…』



あきらかに元気がないのが
分かった…


何かあった?

まさか…     先輩?


色んなことを考えて
不安になってると
リビングの隅に重ねてある
沢山の段ボールが目に入った


まじかよ…  笑

空けてって言ったのに…


まあ、由香らしいけど…


そう思うと、気持ちが和んだ





ーガチャッ



隆「由香!」



玄関の扉が開く音に気づくと
直ぐに部屋から飛び出す

顔が見たくて

早く会いたくて…



由「… お    おかえり…」

隆「ただいまっ!!!」


久々に見る由香は
髪が少し短くなってて
明るかった色も
かなり落ち着いて
雰囲気が違う…

だけど、それはそれで
また凄く似合ってて…

めちゃくちゃ可愛い…



思わず腕を引き寄せて
強く抱きしめた


由「隆ちゃっ… 」

隆「会いたかったぁ…
 良かった…   ちゃんと、居てくれて…」

由「…うん。

 隆ちゃん…  あの…
 苦しいから…」



少し気まずそうに
俺の胸を押して
腕からすり抜ける
 
そのまま
スタスタと歩いてリビングに
入って行く由香に
どこか違和感を感じた…




隆「由香、何で荷物空けなかったの?
 必要そうな物、色々買ったのに…  笑
 見事にそのままじゃん 笑」

由「あ…
 勝手に空けるのもなぁ… って
 思ったから… 」

隆「だから、空けていいよって
 言ったんだよ 笑
 
 一緒に空ける? 笑
 ちょっと、こっち来てみ? 笑」

由「え? 隆ちゃんが空けなよ…
 私、ご飯作らなくちゃ… 
 
 あ…   お腹すいてない?」

隆「腹ペコだよーっ
 早く由香の作った飯食べたくて
 急いで帰ってきたんだよ? 笑」

由「…  そっか…
 急いで帰って来たんだね…」

隆「事務所寄ったり、用事済ませたり
 してきたけど
 頭の中は、由香の事ばっかり
 考えてたよ…  笑 」

由「また、そんな事ばっかり… 」



やっぱり、おかしいな

全然笑わない…


目も合わさないし
心なしか冷たい気がする…


俺が居ない間になんかあった?


柚も様子が変だって
言ってたし…


探り探りで話してたって
ダメか…




隆「由香?  ちょっとこっち来て…」

由「今、ご飯作ってる…」

隆「いいから…  
 そこ座ってよ… 」

由「… 分かった」


少し暗い表情でソファに座ると
下を向いて
俺の顔を見ようともしない


隆「何かあった?」

由「え…?
 何も… ないよ」

隆「じゃあ、何で俺の顔見てくれないの?」

由「別に…  そんな事ないっ」

隆「怒ってる?
 何か冷たくない?」

由「怒ってない…
 何もないし、冷たくもしてないよ」

隆「何で、嘘つくの?
 隠してたって分かるよ?
 いつもと違うじゃん…」

由「嘘なんてついてないよ!
 隆ちゃんに、そんな風に
 言われたくない!!」


声を荒げて否定する由香に
正直、驚いた

付き合ってる頃も
何度も喧嘩したけど
由香はあまり声を荒げたり
した事がないから…

大体、口を聞いてもらえない
事の方が多かったし…


自分でも、驚いたのか
ハッとして立ち上がると
その場から離れようとする由香の
腕を掴んだ


だけど、その手は
振り払われた…


これ、結構キツイやつだ…



隆「どうしたんだよ…
 言わなきゃ、分かんないだろ?
 やっぱり変だよ…
 俺、何かした?
 帰る前に連絡した時だって
 LA居る間も普通だったじゃん…」

由「別に、隆ちゃんが
 悪いわけじゃない…
 私が…    私の問題だから…」

隆「じゃあ、尚更だよ…
 由香の問題で、由香が悩んでるなら
 俺は何とかして解決してやりたいし
 協力したい…
 それじゃ、ダメなの?」

由「…  どうして…?
 どうして、そうやって…
 優しくするの…
 隆ちゃんに、優しくされるたびに
 私は…    私はね…  」

隆「どうしてって…
 分からない? ちゃんと伝えたじゃん…
 好きだからだろ?
 由香の事が好きだし、大事だから」

由「私…  ダメなの…
 自分が分からない…
 欲深くて…  嫌な女だって思った」

隆「何言ってんの?
 由香は、嫌な女なんかじゃないよ…」

由「嫌な女なの! 
 嫉妬して…  妬んで…
 隆ちゃんにまでイライラして…」

隆「ちょっ ちょっと待って…
 嫉妬って何?
 話が見えないよ… 」

由「隆ちゃん、私が可哀想で
 私がこんなだから
 好きって言ったんでしょ?
 本当は違う…
 隆ちゃん、優しいから
 ほっとけなかっただけなんだよ…」

隆「… あのさっ

 何で、そう思うんだよ…
 俺はおまえが可哀想とか哀れだとか
 そんなんで好きだなんて言わないよ?
 
 好きだから、好きって言ったんだよ
 好きだからほっとけないし
 幸せにもしてやりたい…」

由「だったら…

 だったら…    私以外の子に
 優しくしないでよ…
 笑いかけたり…  しないでよ…
 
 私に一番に…       会いに来てよ…   」




泣きながら
一生懸命に自分の心の中の物を
吐き出す彼女


由香の言葉に

その一つ、一つに

どうしようもないほど
胸が熱くなった



由「こんな事…    言いたくないの…

 だけど…
 隆ちゃんに優しくされると
 
 こんな事ばっかり…
 考えちゃって…   」

隆「… 由香」

由「どんどん‥.   欲が出て…
 嫌な事ばっかり…
 
 ただ、苦しくて…

 だから…  隆ちゃんに
 会いたくなかった…のに…」

隆「あの時、会わなければ良かった?
 俺は、由香にまた会えて
 嬉しかったよ…  」

由「会ったら…
 また…     好きになっちゃうから…
 
 覚悟して…
 離れた意味が…   なくなっちゃうから…」

隆「…  好きになった?
 俺を…     また、好きになってくれた?」

由「…  そうみたい

 私…     隆ちゃんが好…っ」




最後まで話すのなんて
待ちきれなくて…

由香を強く抱きしめた

本当に愛おしくて
大好きで…



もう…
止めることなんて
できないや…