美容室からの帰り道…

髪型も変えて、プリンだった
悲惨な髪もすっかり綺麗になった

いつもなら
凄く気分が晴れやかになるのに…

今は少しだけ沈んでる…


あの人…
隆ちゃんとはどんな風に話すのかな?

隆ちゃんも、
どんな風にあの人を見るんだろ?


知り合いなのは間違いないもんね…

お店を出る時も
あのキラキラした笑顔で
挨拶してくれた

その姿が鮮明に焼き付いてて
道端の窓ガラスに映る自分の姿を見て
更に落ち込む…


髪型…
同じように切ってもらって
スタイリングまでして貰ったけど
どう見たって
私はあんな風に見えない

全然可愛くないや…




何で、こんな気持ちになるの?

隆ちゃんの事になると
どうして不安になるんだろ…

私…


やっぱり…
隆ちゃんが…好きなの?




ボーッと考え事をしながら
近くの公園のベンチに座った



遊具で楽しそうに遊んでる子供達に
目を向けて
ぐるぐる回る頭の中を
落ち着かせた


「可愛いな…」


そんな風に思うと同時に
ハッとしてスマホを手にすると
職場に電話をかけた

余計な事を考えすぎて
すっかり頭から抜けてた



『はい、旭ヶ丘保育園です』


由『もしもし…  さくら組の荒木です!
 お疲れ様です!
 園長先生は、今ってお手隙ですか?』

『お疲れ様です! 由香先生?
 園長ですね? 今、変わりますね〜』

由『お願いします…』


保留音が流れてる間
息を整えて、話したい事を頭でまとめた


園『お電話変わりました。
 由香先生? どうしたの?』

由『お仕事中に、申し訳ありません…
 少し、お時間頂けますか?
 大切な話があって… 』

園『あら…  大丈夫よ?
 電話で、平気?
 会って話した方がいい?
 今日は、園にずっと居るから
 来てもらっても大丈夫だから…』

由『すいません…
 本当は、会ってお話したいんですが
 事情があって伺えなくて… 』

園『どうしたの? 深刻そうね…
 話してごらんなさい…』

由『先生…    実は… 』


そこから、今の状況を説明した

婚約者に暴力を受けた事…
都内に身を潜めてる事…

攻撃的な彼が
私を探して、園に問い合わせたり
行ったりするかもしれないとゆう心配

色んな事を想定して
暫く休ませてほしいと伝えた

それが厳しければ
退職したいと…




園『…事情は、よく分かったわ…
 辛かったわね…
 ひとりで、ずっと耐えてたのね…

 こちらとしては、全力で
 あなたをサポートするわ…
 
 休むのは、全然構わない…
 でも、きっとここには
 もう戻らない方が安全ね…

 だからって
 辞めさせたりなんてしないわ…』

由『先生…  でも、私… 』

園『この仕事、好きなのよね…
 
 あのね、ちょうど2月いっぱいで
 産休に入る保育士が系列の園に居るのよ…

 場所も都内だから、きっと通いやすいと
 思うのよね?
 話は、私から通しておくから
 良かったら、ひとまずそこで
 働いてみない? 』
 
由『いいんですか…?』

園『いいに決まってるでしょ? 笑
 それに…    この仕事、
 辞めて欲しくないから…
 あなたは、凄く優秀な保育士よ…
 優しくて穏やかで…
 ちゃんと子供達一人一人と
 向き合ってる…  

 だから、私はあなたを応援するわ…』

由『…  ありがとうございます。」

園『こっちの事は気にせずに
 あなたらしく頑張りなさい!
 例の彼がもしも、尋ねてきたりしても
 あなたは辞めた事にする…

 他の職員にも、そういう事にするから…
 どこから漏れるか分からないからね?

 今回の事は、私とあなただけの秘密よ…』

由『分かりました…

 本当に、ありがとうございます。』

園『2月から、そっちの園で働けるように
 手配しておくわね…

 引き継ぎなんかもあるだろうし
 近いうちにまた連絡するわね…』



それから、新しい連絡先を
園長先生に教えて
電話を切った


やっぱり…
園長先生は、理解があって
凄く温かい人だ


自分が担任していた子供達の事だけが
気がかりだけど…

私が戻る事で
もしかしたら、子供達まで
危険な目に合わせてしまうかもしれない

私情の絡れで
可愛いあの子達にまで
怖い思いはさせたくない

大切な職場の仲間にまで
迷惑かけたくない…



みんな、ごめんね…