由香が買い物に行ってるうちに
残りの仕事を終わらせると
テーブルやソファを占領してる
パソコンや書類を片付けて
軽く部屋の掃除をする

寝癖も直して
ワクワクしながら由香の帰りを待った


朝ごはんとか…

ちゃんと食べるのなんて
いつぶりだろ…

由香が作った飯とか
何年ぶりだ…?





20歳過ぎたくらいだったろうか…


うちの両親の帰りが遅い日が続いて
兄貴はもう家を出てたから
俺と妹の瑞稀で
夕飯を用意しなくちゃならなくて…

俺は、飯なんて作れないから
仕事が終わると
由香を家に呼んで
夕飯を作って貰ってた

毎日のように来て
家族分作ってくれて…

小さい頃から家の事を
何もかも自分でやってた由香は
料理も凄く上手くて…


母さんがめちゃくちゃ
感謝してたっけな…


今思い返せば
ままごとみたいなものだったかも
しれないけど、
あの頃は新婚みたいな気分で
めちゃくちゃ楽しかった…






ーガチャッ


隆「あ! おかえり!!」

由「ただいま…
 
 ビックリしたよ…
 そこのスーパー、
    値段が高いんだもん…」

隆「そお? あんまり行かないから
 分かんなかった…
 お金、足りた? 」

由「足らせた! 笑」

隆「ねえ、それよりさ
 もお1回言って? 」

由「… 何??」

隆「ただいまって 笑
 俺、キュン♡ってした 笑
 もお1回! お願い! 」

由「えー?//  やだよっ!! 笑
 手、洗ってくるっ!!//」

隆「いいじゃーん 笑

 あっ! 何作ってくれんの??」 

由「朝ごはんの定番!! 笑
 隆ちゃん、トマト食べれるようになった?」

隆「知らなーい 笑
 食べてないからっ 笑」

由「絶対食べれないじゃん! 笑
 じゃあ、トマトは入れないね?」

隆「うん 笑」



由香がキッチンでせかせかと
動いてる間に
スマホを開いて
色々と買い物をした

由香が暫くここに居るなら
買い足す物も沢山ある
由香が少しでも、過ごしやすいように…



隆「ねえー… 」

由「何ー??」

隆「何か欲しいものあるー?」

由「特にないよー?
 今日、買い物行く予定だし…」

隆「何買うの??」

由「服とか…
 食材とか? 靴とかも買わなきゃだし…」

隆「そっかぁ…
 えー…  ほかに何かない?
 足りない物とか! 」

由「… 特にないかな?
 あ、でも… 」

隆「何? 何かある?

 ってか、美味そう〜っ♡」


話しながら由香が
キッチンから出来上がった
おかずを持ってくる

俺もすぐに運ぶのを手伝いながら
久々の手料理に
胸がはずむのを抑えられなかった



由「はい、お箸っ」
 
隆「いただきます!!!」

由「どうぞ 笑」
 
隆「うん…    美味いっ!!
 つーか、マジで…
 俺、今すっごい幸せかも…  笑」

由「大袈裟だよ…//」



少し恥ずかしそうに笑う由香を見て
更に幸せな気持ちになる

ずっと、こうしてたいわ…



隆「そうだ! さっきの話だけど…
 何かある??」

由「あー…   うん…
 美容院行きたくて…
 だけど、都内とかよく分からないし…
 ずっと地元の所行ってたけど
 今は帰れないし…

 どこか、いい所ないかな? って…」

隆「美容院? んー…
 そうだなぁ…
 
 あそこは予約取れないしなぁ…
 連絡すれば、特別に
 やってくれると思うけど…

 由香、そうゆうの嫌でしょ?」

由「うん、嫌だ…
 隆ちゃんの名前で特別扱いは
 ちょっと…」

隆「だよね…

 あっ! そうだっ!
 知り合いが居る所、ここから近いよ?
 フリーでやってるから
 その子が居るかは分からないけど…

 でも、凄く良い店だと思う!
 待ってね…    えーっと… 」


スマホを開いて検索すると
由香に渡した


由「U-REALM??」

隆「そう、店舗もあっちこちにあるし
 芸能人も多く通ってる…
 信用できるサロンだよ?」

由「そっか…
 敷居高くないかな?」

隆「大丈夫だって 笑 
 おっ、予約空いてんじゃんっ
 今のうちにしておきなよ!」

由「そっか…   そうだね!」

隆「短くするの? 髪…」

由「結べないと困るから
 そんなには切らないけど…
 とにかく染めたい…」

隆「由香、明るい髪似合うのに…
 俺くらいブリーチしちゃえば? 笑」

由「しない! 笑
 仕事アウトだから… 笑

 あっ!  職場に電話しなきゃ…」

隆「今日は? 仕事?」

由「今日、明日は休み!
 事情話さないと… 」

隆「うん…   早い方がいい…
 俺、片付けやるから
 由香電話してきなよ…

 向こうの部屋使っていいから…」

由「隆ちゃん行ってから、
 電話するから大丈夫…

 落ち着かないし… 」

隆「そっか…  
 確かにそうだよね… 」




俺が家を空ける間
由香も由香でやらなきゃいけない事が
沢山あるんだよな…


きっと、その度に悩んで
ひとりで考え込むんだ…


あー…   心配だわ…









隆「じゃあ、由香…
 何かあったら直ぐに連絡する事!
 緊急事態だったら
 迷わずに俺、柚、祐太郎でも誠でも
 とにかく連絡! 分かった?」

由「分かったよ 笑
 さっきから、それしか言わないじゃん…
 大丈夫だよっ!
 隆ちゃんに、沢山パワー貰ったし 笑」

隆「まだまだでしょ?
 俺のパワーはそんなもんじゃないよ? 笑」

由「分かったからっ 笑
 早く、行って?
 マネージャーさん待ってるんでしょ?」

隆「行きたくねーーっ
 由香、スーツケースん中に
 入らないかな? 笑」

由「もおー…   
 ほら、行ってらっしゃいっ!
 頑張ってねっ!」

隆「エネルギーチャージ…」

由「え…? 」



名残惜しくて
玄関先で由香をギュッと
抱き締める

由香も背中に手を回すもんだから
余計に強く抱きしめた


充電満タンなんて
嘘だけど
笑顔を作って、玄関の扉を開けた


ちゃんと帰るから…

絶対に帰ってくるから…


だから頼む…



隆「 待ってて…  」



扉が閉まる前に、それだけ言うと
由香は一瞬驚いた顔をしてから
少しだけ寂しそうに笑った…