マンションに着くと
エントランスで急にソワソワする由香


隆「どした?」

由「鍵…  私が開けてもいい?」

隆「ん? 笑
 いーよ、練習しなくちゃ 笑」

由「えっと…  暗証番号を押して…
 カードを… 」


ーーウィーーーン



由「あっ! 開いたぁ〜♪ 」

隆「ハハ 笑
 今日イチ、テンション上がってる 笑
 よくできましたぁ〜 笑」



エントランスの扉が開くと
由香は笑顔で喜んだ

ただ、扉が開いただけで
こんなに笑ってくれるなら
何枚でも扉が欲しいよ…


由「部屋の鍵も同じ感じ?」

隆「そうだよ。 
 今と同じようにすれば
 開くから大丈夫 笑 」

由「何か、アトラクションみたい 笑」

隆「ハハ 笑
 最初は、確かにワクワクして
 楽しかったなぁ…

 今じゃ慣れちゃったから 
 日常の一部だけどね… 笑」

由「… 隆ちゃん?」

隆「…  ん?」

由「…  夢、叶って良かったね…」


エレベーターに乗り込むと
一番上にある数字を押す

この家に越して来て一年

タワーマンションの最上階に住むのも
昔は夢のまた夢で…

由香はそんな当時の俺の気持ちや
思いにも気づいてたんだろうか
このタイミングで
そんな事を言う


隆「夢は、まだまだ…

 俺の夢はね、常に変わるんだ…
 夢っていうより、目標…

 叶うたびに次はこうだって
 終わりが見えない…
 まあ、それはそれでいいんだけどさ…」

由「終着点が見えない…?」

隆「んー…
 いずれ、こうしたい とか
 こうなりたい とか考えるけど…

 だけどね…
 常に心に思ってる事は一つかな?」

由「…  それ、聞いてもいいやつ?」

隆「えー…  どうしよっかなー 笑
 知りたい? 笑」

由「多分、分かる… かも」

隆「なんだよそれ 笑
 じゃあ、クイズ形式ね! 」

由「隆ちゃん、ワクワクしてるでしょ?」

隆「いいじゃん! 楽しくて 笑

 あ、着いた…   鍵、開けて?」


玄関の前で、さっきと同じように
由香が鍵を開ける


ーーピー ガチャーー


由「開いたぁーっ」


扉を開けると、俺の顔を見て
嬉しそうに笑う由香を見たら
抑えてたものが溢れ出す


中に入ると、扉が閉まるのと
ほぼ同時に由香を抱きしめた



由「…  隆…ちゃん?」

隆「… さっきの続き

 問題です…
 俺が、常に思ってる事は…?」

由「… 今?
 荷物、落ちちゃったよ…?」

隆「… 早く…
 答えて? 時間切れになるよ…」

由「…  この声が…. 
 続く限り…   歌い続けたい… 」



それを聞いて
より強く、由香を抱きしめた


隆「… 何で知ってんの?
 由香に言ったこと、ないよ…」

由「… 見てたから…
 ずっと、応援してた…

 歌詞も…   ラジオも…
 雑誌のインタビューだって…

 何度も見たし、聞いたし…
 会えないから…
 そうやって、隆ちゃんを見てたよ…」

 

思わず由香の顔を見ると
瞳にいっぱいの涙が
今にも溢れそうになってた


引き寄せられるように
そっと頬に手を当てると
そのまま顔を近づけて唇を塞いだ


気づけば、お互い
何かが外れたかのように
激しく求め合うようなキスに変わる


由香…


ごめんな…


ごめん…


やっぱり、俺…


おまえのことが

好きだわ…