警察が到着して
彩を警官に引き渡す


パトカーに乗せられる瞬間
抵抗して、暴れて
警官と一緒に彩を無理やり
車に押し込んだ


罵声を浴びせられ
思いっきり頬を引っ叩かれた



彩「全部!! 元はと言えば、
 あんたのせいでしょ!!
 なんでよ! なんで私ばっかり
 こんな目に合うの!!
 
 歌えなくなればいいのよ!
 あんたみたいな最低な男が
 いい歌なんか歌える訳ないじゃないっ!!

 返してよ!! 私の人生返せよっ!!」




警察官に無理やりドアを
閉められ、中で手錠をかけられる姿を
俺はただ、見てる事しかできなかった

彩を、こんな風にしたのは
間違いなく俺だ…

だけど、花や春にした事を
考えたら…


謝罪の言葉は
出て来なかった





パトカーが出発しようと
した瞬間だった





「待って!!!」




花が、車の窓を叩いて
彩に話しかけた

俺も、警官も彩も
驚いていた





彩「… なっ  何!?」




花「…  あの事故も、今も…
    凄く怖かったし、子供まで巻き込んで…
 あなたのした事は許せない…

    だけど、 あなたは
 臣を好きになったんでしょ?
 
 今も、臣を好きなら…
    好きな人、困らせたり悲しませたり
 しないで…

    歌が何よりも大切な彼に
 歌を…     歌うななんて言わないで…
 

    自分を見失うくらい、ダメにするくらい
 好きになった相手を、その人の大切な物を
 侮辱しないで…

   
 好きだった気持ち…
   もっと大切にして…       」
   
彩「あんた…  ばっかじゃないの!?
 なんで、そんな事あんたに言われなきゃ
 いけないのよっ!!
 私が、どんな思いで…
    どんな…     うっ…   うっ…  うぁーーーっ」



突然、彩は何かが
切れたように泣き出した



花「… 臣  この人は、ただ臣を
 好きだっただけだよ…
    好きの伝え方間違えちゃった
 だけだよ…   
    だから、彼女のその気持ち
 否定しないであげて…」

臣「あぁ…

   彩…        傷付けて、辛い思いさせて
 本当に悪かった…

    ごめんな…

    おまえの気持ちに、ちゃんと向き合って
 答えられなくて…  ごめん 

 本当にごめん…   」



彩「…   ズルイ…
    ずるいよ、臣くん…  」

臣「…  ごめん」

彩「… あの頃、私を一度でも
 好きだって 思ってくれた?」


臣「…  ゴメン。

 ただ、あの頃のおまえは
 キラキラしてて本当に綺麗だったよ…」

彩「…  嘘もでも、好きとは
 言ってくれないのね…
 
 キラキラかぁ…       


 何年かかるか分からない…
   だけど、いつか必ず
 また、あなたと同じ世界に戻ってくる!

 キラキラ輝いてたあの頃みたいに
 また、ランウェイ歩けるように…



    花さん…      許されないのは分かってる

 だけど、あなたを巻き込んで
 子供にまで手を出してしまって
 ごめんなさい…   」

花「モデルのあなた、凄く素敵でした…」

彩「… 変な感じ…
 
 私… 臣君の事は、もう忘れます…
    
 でも、好きだった気持ちは
 忘れずに大切に閉まっておきます。」


警「そろそろ、いいですか?」

彩「はい、行ってください。

 臣君…     さようなら 」



臣「… じゃあな 」



彩は頭を下げてから
しっかり前を見て
車は走って行った



花は、張り詰めた空気が
解けたからか
その場に座り込んだ



臣「花…  人もまだ居るし
 一回健ちゃんの車行こうか…?」

花「… うん。

 何か…  力抜けちゃった…」

臣「無事で本当に良かった…」

花「ありがとう。 助けてくれて…」

臣「当たり前だろ…
    立てる? ほら、手…」

花「うん、大丈夫…
   誰かに気付かれてたら大変だから…

   一人で歩けるし…」

臣「いいからっ」




花の手を掴んで立たせると
そのまま、健ちゃんと
直人さんの所へ向かった


花の手の感覚が
物凄く懐かしくて
胸が締めつけられた





健「臣ちゃん! 早く乗ってー!」

直「ハァ…  誰にも気付かれてなきゃいいけど…」

健「多分大丈夫じゃないっすか?
 見てる限り、撮影してるような
 人も居なかったっすよ?」

直「本当かよっ
 あーっ しかし、キミ達二人は
 どうして車なのかな?

 健ちゃん、まさか運転してきたのかな?」

健「いやっ 違うんすよ!
 臣ちゃんが、車出せって煩くて…
    
 直人さん! 事務所には黙ってて下さい!
 バレたら、釣りに影響しますんで…」

直「どーしよっかなー 笑

 でも、健ちゃんのおかげで
 花は無事だったし今回は多目に見ますか!」

健「直人さーぁん! マジ、神!!」

臣「いや、ほんっとに神です!
 直人さん居なかったら
 マジでヤバかった…

 本当に、ありがとうございます」

直「おまえらさー
 もし何かあったら
 どうするつもりだったの?」

臣「…  そんな事、考えてる余裕なんて
 なかったです…

    自分の目の前で、花が…

    咄嗟に走ってました。」

直「だよなぁ…   俺も一緒だわ」

健「… 花ちゃん。
 
 着いたで…     」


花「… うん。

 あの、みんな…

    ありがとう…

    ライブの後で、凄い疲れてるでしょ…

    直人…   コレ。

 さっき、スーパーで買ったの… 
 渡そうと思ってて…」

直「…  ありがとう  ハハ 笑
 花らしいチョイスだわ 笑」

花「何がいいかわからなくて…
    疲れてると思ったし…  」

直「うん、いいよ!
 嬉しいよ  ありがとう!」

健「え? 何で直人さんだけ?」

臣「… たしかに」

花「直人、来るって言ってたから…

    臣と健ちゃんは
 来るの知らなかったし…
    ゴメンね?  

 でも、本当にありがとう…

 じゃあ、行くね… 」




車から降りて、手を振る花


ちゃんと話したい

これからの事…


俺がドアに手をかけようとした時

直人さんに言われた



直「… 臣。
 ちゃんと、話してこい…

   これからの事、花は相当悩んでる…
   簡単に決断できる事じゃないから…

 おまえが、手を引いてやれ…
 守ってやれ…

    花だって、おまえと一緒に居たいんだ

 臣が、臣にしか出来ないやり方で
 花と春を幸せにしてくれよ… 」

臣「…   直人さん」

直「…  じゃ、頑張れよ!
 行こう! 健ちゃんっ!」

健「はーい! じゃ、また明後日な!
 バイバイ、臣ちゃん!」

臣「健ちゃん…  本当ありがとう!」





車から降りて、アパートの中に
入って行った花の後を追った
玄関の鍵を開けて
扉を開けるところだった




 

臣「花!!」


振り返ると目を見開いて
驚いた顔をする花を
思わず抱きしめた



花「… 臣?
 …どうしたの?」

臣「… もう、無理…
   辛過ぎる…

   会いたくて、会いたくて
 話がしたくて…  」

花「… 人に見られるよ」

臣「…   じゃあ、家入れて?」

花「… 臣」

臣「入れてくれなきゃ、帰さない…
 このまま、俺が花を連れて帰るよ?」






花は、そっと俺から
離れて部屋の扉を開けた