目の前に
臣がいる…
ずっと… ずっと会いたかった
抱きしめられた瞬間
臣の香りが
凄く懐かしくて
一瞬で沢山の思い出が蘇る…
幸せだった、あの頃の気持ちが
鮮明に…
やっぱり、あたしは
この人じゃなきゃダメなんだ…
でも…
医「… うん… 大丈夫そうですね。
検査結果も特に異常ないですし…
ただ、頭を打ってるので
念の為１〜２日入院して安静に
して下さい…。 」
臣「… 本当に、大丈夫ですか？
どこも悪くないんですよね？」
医「今の所は…
しかし、絶対とは言えないので
その為にもう数日大事をとって入院して
頂きたいんです。 」
臣「… 分かりました。
ありがとうございます。」
花「… あの！
息子の所に… 行きたいんです。」
医「… 分かりました。
今、看護師が車椅子を用意しますので…
でも、無理はしないで下さいね？」
花「… はい。」
春…
春、ごめんね…
看護師さんに車椅子を
押してもらって
臣も一緒に春が眠る部屋に入った
花「春！！ 春…」
看「良かったね〜
お母さん、来たよ〜
では、私は戻りますので
何かあったらすぐにナースコール
押してくださいね？ 」
花「… ハイ。
あの… この子は…
目を… 覚ましますよね？」
看「お母さんが、いっぱい話しかけて
あげて下さい…
信じて… ね？ 」
花「…ハイ
春… 春、ママだよ
ごめんね… 一人にして…
もう、大丈夫だよ
ママがずっと… 一緒に居るからね…」
臣「花…
俺も居るから…
一緒に、居るから…」
花「臣…
あたし… 守れなかった…
ごめんなさい… ごめんなさい…
春の事、 守れなかった… 」
臣「なに言ってんだよ…」
花「… あたし、春を生んだ時に
誓ったの…
臣の分まで、あたしがこの子を
守っていこう… って
絶対立派に育ててみせるって…
春… 春が…
春がこのまま…
目を覚まさなかったら…
あ… あたし…
生きていけない… 」
臣「…花
そんなこと言うな…
大丈夫だ…
信じて待とう… な？」
臣が優しく背中を
さすってくれた
臣「… 花
俺のせいだから…
こうなったのも、何もかも
全部… 俺のせい…
絶対に 何とかするから…
もう、絶対巻き込まない…
怖い思いさせて…
本当にすまない… 」
花「… 見たことある人だった…
名前が、 思い出せないけど…
あの人、
凄い怖い声上げて笑ってた…
頭から離れないよ… 」
あの時のことを思い出すと
恐怖で手が震えてきた
臣は…
臣は、あの人に
一体何をしたの…？
どれだけ酷い事をしたの…？
聞きたくても怖くて
聞けない自分が居た…
臣「花… 大丈夫か？」
花「… 大丈夫…
思い出すと、怖くなっちゃって…」
臣「… ごめん…
こうなった経緯… 聞いてくれるか？」
花「…うん。」
臣は、あたしの手を握りながら
ゆっくり話し始めた
臣「俺、花と別れてからさ
かっこ悪いけど
暫くの間、本当にめちゃくちゃで
全てどうでも良くなってて
毎日ムシャクシャしてた…
そんな時、あきひろの紹介で
あの女に会った…
中本彩 花、分かるか？」
花「… あ、思い出した…
その人だ… 分かる」
臣「俺は、付き合ってるつもりも
なければ大事になんてしてもなくて
正直、最低だけど…体だけの関係
だと思ってた…
気持ちなんて全くなかった…
でも、向こうは違った
元々ファンだって言ってたし、
好意を持たれてるのもわかってた…
俺は、それを知ってるのに
彩を都合よく利用したんだ…
そのせいで、彩は仕事も友達も
大事なもん全部無くしたって言ってた。
最終的に、そんな関係も
鬱陶しくなって
俺が、一方的に関係を切った…
その結果、恨まれて…
巻き込んで、本当にすまない…」
花「そう…だったんだね…
彩…さん？ からしたら
確かに、臣を恨むしかなかったのかも…
臣が、した事は
本当に最低だと思う…
ちょっと… ショックだったかも…
だって、臣は…
そんな事、する人じゃない…
臣を…そんな風にしちゃったのは
あたしだよね…
間違ってたのかな…
あたしがあの時下した選択は
結果的に… 誰も幸せじゃない…
臣を… 守りたくて
みんなを… みんなには
迷惑かけたくなくて…
でも、結局…
臣にも… みんなにも…
迷惑かけちゃった… 」
臣「おまえは…！
おまえは、なんも悪くないんだって…
俺や、メンバーの事を考えて
そうしてくれた…
全部ひとりで背負って…
俺があいつにした事は
俺自身が弱かったせいで
花のせいじゃない 」
花「臣…
さっきさ…
これから、春もあたしも
幸せにするって言ってくれたでしょ？
嬉しかったよ
あたしは… 臣が好き…
それは、ずっと変わらない…
もう、嘘はつかない…
でも、やっぱり
臣とまた一緒に居る事はできない…
考えられない… 」
臣「なんで…」
花「生きてる世界が違うの…
あたしと春は…
春は、臣を知らない…
理想と現実は違う
あたしね、母親になって
よく分かったの…
子供が居ると、なにもかも
現実的に考えなきゃいけない
現実しか見えないの…
ずっと父親の居なかった春に
いきなり パパ だよ なんて
言えない…
春を混乱させたくない…」
臣「 そうかもしれない…
たしかに、花の言う通りかも
しれないけど…
俺が無理だよ
おまえが何て言おうが
俺はこの先…
花と春が居ない人生は
考えらんねーよ… 」
花「臣… 」
真剣に話す臣の目を
ちゃんと見ることが出来なかった
色んなことが
一気に起こり過ぎて
頭の中がぐちゃぐちゃだよ…
こんな形でも、また臣に会えて
声を聞けて 触れる事も出来た
嬉しくないわけない
ずっと会いたかった…
触りたかった…
名前を呼んで欲しかった…
あたしだって一緒に居たい
だけど、そんな簡単じゃない
臣よりも 春が大事だから…