神社/稲荷神社・神号 | 獨と玖人の舌先三寸

神社/稲荷神社・神号

●神社――
じんじゃ、かむやしろとは、神道の信仰に基づき作られた、恒設の祭祀施設です。
一方で神社によっては式年遷宮の習わしがあり(代表例は伊勢神宮)、必ずしも同じ社が恒設される物ではありません。
古くは社殿がなくとも神社とされました。山、滝、岩、森、巨木など多く自然を畏れ“カミ”(=信仰対象、神)とみなしました。すなわち現在の社殿を伴う“神社”は、これら神々が祭祀時に御神体から移し祀られた祭殿があって、これが常設化した物だと考えられています。教会や寺院といった礼拝堂や説法、布教する場とは趣が異なるのが特色です。
現在では結婚式の設備(斯様な近代的建築としては明治神宮外苑が顯著)が造られることも多いです。戦前にはいわゆる“国家神道”のことを単に“神社”と称していました。

起源は、磐座(いわくら)や神が住まう禁足地(俗に神体山)などで行われた祭事の際に臨時で建てた神籬(ひもろぎ)などの祭壇で、元々は常設のものではありませんでした。元来は沖縄の御嶽(ウタキ)のようなものだったと考えられています。
古代から続く神社では、現在も本殿を持たない神社があり、磐座や禁足地の山や島などの手前に拝殿を建てるのみの神社(例、大神神社、石上神宮、宗像大社)、全く社殿が無い神社(那智大社の飛瀧神社など)もあります。神社には常に神がおわすとされるようになったのは、社殿が建てられるようになってからと言われます。また常設されるようになった過程には仏教寺院の影響があるとも。





●稲荷神(稲荷大神、稲荷大明神)――
山城国稲荷山(伊奈利山。現在の伏見稲荷大社)に鎮座し、その伏見稲荷大社から勧請されて、全国の稲荷神社などで祀られています。
総本宮である伏見稲荷大社では、宇迦之御魂大神を主祭神に、佐田彦大神(さたひこ)、大宮能売大神(おおみやのめ)、田中大神(たなか)、四大神(しのおおかみ)とともに五柱の神として祀っていますが、これら五柱の祭神は稲荷大神の広大な神徳の神名化となっている感があります。
記紀神話において、5つや10以上の数多ある存在と名前は、事績や御神徳などで大概同一視されます。稲の神であることから食物神の宇迦之御魂神と同一視され、後に他の食物神も習合しました。
獨と玖人の舌先三寸-110301沢蔵司稲荷・霊窟 110301文京区小石川、沢蔵司稲荷霊窟。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は日本神話に登場する神様。“古事記”では宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、“日本書紀”では倉稲魂尊(うがのみたまのみこと)と表記されています。両方とも名前が出て来るだけで事績の記述はありません。出生も異なります。性別がわかるような記述もなく、男神とも女神ともされますが、稲荷神社の総本社、伏見稲荷神社では女神としています。
また、神仏習合思想においては仏教における荼枳尼天(だきにてん)が本地仏とみなされ、豊川稲荷を代表とする仏教寺院でも祀られています。
獨と玖人の舌先三寸-111124深川出世稲荷 111124深川出世稲荷。
神仏分離の下、神道の稲荷神社では、記紀に記載される宇迦之御魂神(うかのみたま)、倉稲魂命(うがのみたま)、豊宇気毘売命(とようけびめ)、保食神(うけもち)、大宣都比売神(おおげつひめ)、若宇迦売神(わかうかめ)、御饌津神(みけつ)などの穀物・食物の神を主祭神としています。
京都に総本社がありますが、宮城、栃木、愛知を上位に、東日本に多く存在しています。江戸東京では「伊勢屋、稲荷に、犬の糞」などという流行り文句があるほど、巷に存在していたのです。

※伊勢屋というのは、伊勢(三重県)出身の商家のこと。幕藩体制が整ってくると、江戸へ進出してくる商人が増えました。とくに、伊勢、三河(愛知県)、近江(滋賀県)、京、堺といった西国の商人が進出してきて、彼らの多くが出身地を屋号としたため、江戸中に伊勢屋、三河屋、近江屋といった看板が立ち並ぶことになったんです。聞き覚え、見覚えがあるのでは?w

中世以降、工業・商業が盛んになってくると、稲荷神は農業神から工業神・商業神・屋敷神など福徳開運の万能の神とみなされるようになりました。江戸時代には芝居の神としても敬われるようになり、芝居小屋の楽屋裏には必ず稲荷明神の祭壇が設けられるようになりました。

勧請申請の方法が容易なため、農村だけでなく町家や武家にも盛んに勧請されました。

お稲荷さん=狐の神様と思われがちですが、狐は稲荷大神(おおかみ)の神使(しんし)です。
神社全体の3分の1にあたる約3万社がお稲荷様。稲生や稲成という神社も稲荷大神です。
五穀豊穣、開運、商売繁盛などのご神徳(=ご利益)。
豊饒の神。食物神、農業神、殖産興業神、商工業神、屋敷神。
宇迦が穀物、食物を意味しています。
豊饒の神様なので、他の願い事でも聞き届けてくれます。万能に等しい広大な御神徳です。
稲荷社にある“正一位稲荷大明神”という幟も特徴です。“正一位”は最高の神階で、稲荷大神は神様の中でも最高の位であることを示しています。

稲荷神社では、2月の最初の午の日に「初午祭」を行っています。これは、伏見稲荷神社の祭神が降りたのが和銅4(711)年2月の初午だったからと言われてます。
これに際し東京では、行灯に地口とそれに合わせた絵を描いた「地口行灯」を街頭に飾ることがあります。





※みこと――
神号。いわば尊称。代表的なのは“かみ(神)”と“みこと(命・尊)”。“みこと”は“御事”すなわち命令のことで、某の命令を受けた神につけられるものです。
例えばいざなぎ、いざなみは、現れた時の神号は“神”。別天津神より「国を固めよ」との命令を受けてから“命”に神号が変わっています。
“日本書紀”では全て“みこと”で統一されています。特に貴い神に“尊”、それ以外の神に“命”の字を用いています。さらに貴い神には大神(おおかみ。これでおおみかみとも)、大御神(おおみかみ)の神号がつけられます。また、後の時代には明神(みょうじん)、権現(ごんげん)などの神号も表れました。