発がん性疑い「PFAS」多摩地域で大規模血液検査 市民団体が23日から 米軍横田基地の周辺井戸水から検出

 
東京都多摩地域の水道水に使われていた井戸水から発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)が検出されたことを受け、地元の市民団体が23日から、地域住民数百人を対象に大規模な血液検査に乗り出す。PFASの検出は各地の米軍基地周辺で相次ぎ、多摩では横田基地(福生市など)との関連が取り沙汰されている。健康被害のリスクを高める物質ともされるが、原因究明や汚染防止に向けた自治体の動きが鈍いとして、市民が立ち上がった形だ。
 

周辺の井戸水から有機フッ素化合物(PFAS)が検出された米軍横田基地=東京都福生市で、本社ヘリ「あさづる」から(中西祥子撮影)

有機フッ素化合物(PFAS) 泡消火剤や撥水はっすい加工品などに使われる合成化学物質の総称。1950年代から家庭や空港などで広く使われていたが、自然分解されにくい性質や健康被害への懸念から、PFASの一種のPFOSは2009年、PFOAは19年にストックホルム条約で製造・使用が原則禁止された。国内では20年に暫定目標値として、PFOSとPFOAの合計を水道水1リットル当たり50ナノグラム以下と設定した。

◆京大准教授が血液分析、汚染源特定目指す

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 検査を計画するのは「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」。23日に国分寺、小平、小金井、武蔵野、西東京の5市の希望する住民を対象に、国分寺市の本町クリニックで検査を開始。5市以外でも順次検査し、来年以降の結果の公表を目指す。

 明らかにする会は、採取した血液の分析を全国的なPFAS調査に取り組む京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)に依頼。水道水が人体に与える影響などを調べ、汚染源を特定し汚染防止につなげたい考え。

 PFASは、米軍が使用していた泡消火剤に含まれており、各地の米軍基地周辺で漏出が発覚。沖縄県では普天間飛行場や嘉手納基地、神奈川県内の厚木や横須賀の両基地でも確認され、地元から批判の声が出ている。

 横田基地が疑われるのは、英国人ジャーナリストが2018年、基地内の泡消火剤3000リットル以上が10〜17年に土壌に漏出したと報じたからだ。これを受け都が基地周辺の井戸を調査し、高濃度のPFASを検出。府中武蔵台(府中市)、国立中(国立市)、東恋ケ窪(国分寺市)の浄水所3カ所で一部井戸水からの取水が停止された。今も国の暫定目標値を上回り、停止は続いている。発がん性疑い「PFAS」多摩地域で大規模血液検査 市民団体が23日から 米軍横田基地の周辺井戸水から検出:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

◆市民団体「検査を都や国の調査につなげたい」

 民間団体が20年、府中・国分寺両市の22人の血液を調べたところ、全国平均よりも高い濃度のPFASが含まれていた。

 明らかにする会事務局の根木山幸夫さん(75)らは、横田基地への立ち入り調査を望んでいるが、具体的な動きが見えない。都化学物質対策課の担当者は「米軍からの漏出事故の報告があったわけではなく、ある程度の根拠がないと立ち入り調査もできない」と説明する。

 根木山さんは「行政側の動きがないので、自分たちでやるしかない」と検査に踏み切った理由を説明。会場費や採血スタッフへの手当ては寄付で賄う。「私たちの検査を通して、都や国による広域疫学調査につなげていきたい」と訴えた。

 本紙は、米軍横田基地の広報担当に、PFAS漏出について質問したが、期限までに回答はなかった。