筆者は情報業務についていた関係で、機密費(正確には報償費)を用いて仕事をしたことが何度もある。機密費は領収書や伝票などの証拠書類がいらないので、要人の買収、いかがわしい接待で相手の弱味を握るなどどのようなことにでも使うことができる。
筆者が初めて内閣官房機密費をもらったのは1997年、江田憲司首相秘書官(当時、現衆議院議員・みんなの党)からだった。江田氏から「モスクワに出張する前に(首相)官邸に顔を出しなさい」と言われていたので、挨拶に行った。1階の会議室に案内された。江田氏はポケットから白い封筒を出し、「これを使って」と言って差し出した。筆者は「ありがとうございます」と礼を言い、封筒を鞄に入れた。封筒には30万円が入っていた。
このとき江田氏が「官邸にきて初めて知ったけれど、外務省は裏のカネをたっぷりもっている」と言っていたことを鮮明に記憶している。今になって思うと外務省から官邸に秘密裏に上納されていた機密費のことを江田氏は示唆していたのだ。
江田氏は機密費の闇について知る生き証人だ。普天間問題で窮地に陥った現官邸が沖縄の分断工作に機密費を用いることを牽制するために、江田氏が機密費について知る真実を国民の前に明らかにすることがみんなのためになると思う。
(6月4日付東京新聞朝刊25面)