とらっく野郎さんから教えていただきました。有難うございます!!


書評: 佐藤優


http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100314/acd1003140901004-n1.htm


□サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ著、染谷徹訳

 ■国家体制強化が課題と痛感


 ロシアでは、スターリンの見直しが進んでいる。今年5月6日の対独戦勝65周年記念日の前にモスクワ市が、スターリンの肖像や実績を記した戦勝記念の看板を市内10カ所に設置すると発表した。また、スターリン批判により13巻で中断した『スターリン全集』の続刊が現在18巻まで刊行されている。その中にスターリンが北方領土の占領に意欲的だったことを示す文書も収録されている。スターリン主義が、メドベージェフ大統領・プーチン首相の双頭体制のロシアで、よみがえりつつあることに、日本人はもっと警戒心をもつべきだ。


 スターリン主義の原因をスターリンの個人的資質に求めることは間違いだ。本書を読むと、スターリン主義が「赤い皇帝」とそれを取り巻く共産党幹部たちによってつくられた、壊れにくいシステムであることがよくわかる。その鍵は少数民族出身のグルジア人でありながら、大ロシア主義の立場に立つ民族理論をスターリンが構築し、この理論に依拠したことでソ連の国家体制が盤石なったからだ。〈民族問題はスターリンの得意分野となる。『マルクス主義と民族問題』はボリシェビズムの立場からロシア帝国の統合維持を主張する内容(の論文)で、イデオロギー上の傑作として、スターリンがレーニンの信頼を勝ち取るきっかけとなった〉。この民族理論に基づきソ連は「赤い帝国主義」政策を展開する。


1950年代に入り、スターリンが猜疑(さいぎ)心を高め粛清を行い、そのわざわいが降りかかる危険性を感じた廷臣たちは大きな決断をする。〈最近の研究では、たとえばワルファリンのような血液凝固阻止剤をベリヤがスターリン血液凝固 阻止剤を飲まされれば、その数日後に発作に見舞われてもおかしくない。その場合にはフルシチョフなど全員が共犯だっただろうスターリン 暗殺説に関する本書の記述は説得力がある。ロシアでよみがえる21世紀のスターリン主義に対抗できるように日本の国家体制を強化することが焦眉の課題であると痛感した。


(白水社・上巻4410円、下巻4830円)