宮崎正弘・佐藤優共著『猛毒国家に囲まれた日本』海流社
 << 佐藤優「まえがき」から抜粋 >>

 「国家には、生き残り本能がある。去年(2009年)8月30日の衆議院議員選挙(総選挙)で民主党が308議席を獲得して、政権交代が実現したことも、日本国家の生き残り本能によるものだ。
 マスコミは、総選挙で民主党が圧勝したと報じたが、これは間違いだ。自民党が自壊しただけのことだ。2001年4月の自民党総裁選挙で、小泉純一郎氏は、「自民党が変わらないならば、自民党をぶっ壊す」という公約を掲げ、当選し、自民党総裁兼内閣総理大臣に就任した。自民党は変わらなかった。それに加え、新自由主義という猛毒を「改革」という名で導入してしまった。その結果、富裕層と貧困層の格差がかつてなく開いてしまった。日本の総中流社会は、崩壊しかけている。競争に敗れ、底辺に転落してしまうと、自力で這い上がることができない状態になってしまった。都市と地方の格差も開いてしまった。地方で生まれた人々は、教育や就職で不利な状況に置かれている。

 問題は、経済面だけではない。新自由主義が浸透したことによって、一人一人がばらばらに分断されてしまった。そして、同胞意識が稀薄になった。北朝鮮による日本人拉致に関しても、国民的関心が低くなっている。拉致問題は、日本人の人権に対する侵害であるとともに、日本国家の主権を北朝鮮政府の工作員が侵した複合事案だ。国権と人権に対する侵害を回復できない国家は、まともな国家ではない。
 北方領土交渉もまったく進捗していない。それどころか、法的にはわが国の領海である北方領土周辺において、日本漁船が銃撃される例が後を絶たない。(中略)

 日本は、中国、北朝鮮、韓国、ロシアという、実に面倒な諸国に囲まれている。もっとも世界のどの国を見ても、隣の国との関係は、常に難しいのだ。しかし、東西冷戦の時代、このような隣国との関係の難しさを日本人はあまり自覚しないで済んだ。日本がアメリカの傘の下に入っていたからだ。しかしそのような甘えはもはや通じない。今年2月に突然始まったトヨタ・バッシングで明らかなように、アメリカも自国の国益を第一義的に追求しているのだ。
 検察が民主党の小沢一郎幹事長に「戦争」を仕掛けた後遺症で、日本の政治エリートの関心が極端に内向きになっている。検察・小沢戦争は、「誰が日本国家を支配するか」を巡って展開されている官僚と政治家の権力闘争に過ぎない。こんなつまらない諍いを起こしている間に、日本の国際的地位が低下していく。

 このような情況を変化させ、日本の国家体制を少しでも強化させ、猛毒国家と対抗できる力をわれわれがつけなくてはならない。私は宮崎正弘氏をとても尊敬している。それは、宮崎氏が、私の言葉では親日保守で右翼、宮崎氏の言葉では真性保守だからだ。宮崎氏は中国事情に関する第一人者だ。日本人のみならず、中国人が、中国情勢に関する情報や分析について宮崎氏に尋ねる。私の外交官としての仕事は、ほとんどロシア絡みだった。いまでもときどきロシア人から、クレムリン(露大統領府)の権力闘争についての見方や、ロシアの国家戦略について意見を求められることがある。こういう質問をしてくるロシア人に、「なぜ現役を退いている僕の意見を求めるのか」と尋ねたら、「政争に絡む利害関係がなく、熱い政局から距離がある外国人の方が、政治の流れを正確にとらえることができる」という返事がかえってきた。

 この対談で、宮崎氏は主に中国について、私は主にロシアについて、特定の勢力に肩入れをすることもなく、また、日本にとって都合がよい希望的観測も入れずに、突き放して、冷静に分析することを試みた。宮崎氏と話していると、外務省国際情報局の主任分析官として、諸外国インテリジェンス機関の分析専門家と共同作業をしていたときのことを思い出した。

 猛毒国家に対抗して、日本国家と日本人が生き残っていくためには、われわれが強力な解毒剤をもつ必要がある。この解毒剤は、思想の力によってのみつけることができる。南北朝時代に南朝の忠臣であった北畠親房は、『神皇正統記』の冒頭で、われわれの思想の神髄を「大日本者神国也(おおやまとはかみのくになり)」という一文で表現した。神の国である日本にたくわえられてきた叡智によって、現在の国難を乗り切るのだ。まず、中国、ロシア、北朝鮮という危険国家に囲まれている現実を直視することだ」。
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宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社、1575円)
http://www.amazon.co.jp/dp/475931122X/


2010.03。19__________________________


マイブーム

現在、私たちを取り巻く世界は虚言と虚構に包まれています。殊に国際政治においては、嘘は情報操作の手段の一つであり、戦略として虚構なき国家など存在しえません。
「虚言と虚構」という点において世界を見回すと、中国、ロシアは世界でも群を抜いた猛毒国家と言えます。2大猛毒国家に囲まれた日本が、それらの実情を見抜き、生き残るためにはどうあるべきか。
「戦後最強の外交官」とも称されたミスター・ロシア佐藤優氏と、中国問題のエキスパート宮崎正弘氏が、ロシアと中国の嘘と虚構を暴きつつ、戦略なき日本がこれからの国際政治で台頭していく道筋を模索します。両氏は、「教養」こそが世界を正しく見る力であり、「情念」こそが国家を突き動かし、「超越性への感覚」が、日本が新しい歴史を作る力になると語ります。誰よりも日本を愛する情熱と、真の教養を持つ二人による、熱のこもった対論集。

2010/03/10_____________________________________________________________________________
佐藤 優著
宮崎正弘著
税込価格 ¥1,575 (本体 : ¥1,500)
出版 : 海竜社
サイズ : /
ISBN : 978-4-7593-1122-8
発行年月 : 2010.3

猛毒国家に囲まれた日本 中国・ロシアという世界でも群を抜いた猛毒国家に囲まれた我が国の外交戦略は如何に。2人のエキスパートによる熱のこもった対論集。


シゲさん、情報有難うございます!



(内容の一部)
ロシアと中国、それぞれの外交原理、国家のあり方の差違

 ・文明の衝突? 歴史の終わり? 
米国の考え方は普遍的であり、日本の常識はいまも世界の非常識
 ・ロシアはこれからどうなるのか。
ソルジェニツィンが予言したようにスラブ三兄弟(ベラルーシ、ウクライナと再合併はあるか)

中国とロシアの経済は崩壊するのか、それとも成長を続けるのか  
政治体制は変わっていくのか。「自由」と「民主」が実現するのか 
 ・年内にGDP世界第貳位。軍事的にも世界二位?
 ・SDRに切り替え、ドル基軸のIMFを揺さぶり、経済覇権も狙う。

日本の将来はどうなる?
 ・日米安保条約は空洞化するか、軍事同盟化するか? 
 ・日本が中国の核の傘にはいる?
 ・日本がロシアと軍事同盟を結び中国を囲む
 ・日本が印度と軍事条約を結び中国を囲む
 ・日本が独自の防衛力を整備し、真の独立を果たす

えっつい拝