皆さん、こんにちは。
氷上エメロードです。
先日、youtubeに初めて動画を投稿しました。
3分で分かるタロット解説―第0話「愚者」です
今回はこの動画の補足を書きます。
愚者のカードは、立場の違いはありますが、
どの版でもアウトローの放浪者であると私は考えます。
ウェイト版以外の愚者(ヴィスコンティ版やマルセイユ版)では、道化や狂人を描いており、自分をマトモだと思っている人から見ると
「あいつ、変だぞ」と言われる人であることが多いです。
ただし、先述の「自分をマトモだと思っている人」だとしても、何かしらのきっかけで常識から逸脱した存在になることはあります。
例えば、事故や病気、災害等にあって全財産を無くしたり、何かのきっかけで発狂することだって誰にもあるのです。
恐らく、愚者のような格好に至る経緯を知っていれば、誰もその人をおかしいとは言わないでしょう。
また「自分をマトモだと思っていても」自分の中での自覚であり、ある文化圏から見たら変な人かもしれません。
現に、愚者に書かれいる男性だって自分が狂っているとは思っていないでしょう。
しかし、多くの見た目だけしか見ない人は、そこに至るまでの経緯を見ず、場合によっては暴力を振るったり侮辱の言葉を投げかけるのです。
※だからヴィスコンティ版タロットの愚者は武装している。
個人的には経緯を知らず、見た目だけを見て他人を攻撃しても「自分をマトモだと思える」時代はさっさと終わって欲しいですね。
ウェイト版の愚者が普通(寧ろ裕福そうな格好)に描かれていることから、恐らく20世紀くらいから変わりつつある価値観なのかもしれませんが、2020年の今でも私は、まだそのような考えは消えていないと思います。
愚者のような存在として、
ロシア正教の民間信仰にしばしば登場する聖愚者/伴狂者(ロシア語だと”ユロージヴィイ・юродивый(男性)/ユロージバヤ・юродивая(女性)”がいます。
描かれた聖愚者だと、V.I.スリコフの「モロゾヴァ夫人」の絵が有名ですね。
※下記画像の右側で物乞いのような服装で十字を切っている男性が聖愚者
※V.I.スリコフ(1887)「貴族夫人モロゾヴァ」トレチャコフ美術館所蔵
聖愚者とは昼はボロをまとって徘徊し、寒さ・暑さ・飢え・辱めを忍び、夜は聖堂の軒下などに野宿して祈る聖人のことです。
「佯」とは見せかけの意で、愚か者を装ってキリストの真理を明らかにする者です。
聖愚者の何人かは権力者に真実を言うこともしたとのことで、中世のヨーロッパの宮廷にいる道化のような役割もあったとのこと。
もしかしたら愚者の多くは、
自分の見てくれだけみて蔑む「自分をマトモだと思っている人たち」を冷笑していたのかもしれませんね。
あるいは、そもそも自分の真理にしか興味がないので、他人にどう思われるのかに関心がないとか。
新型コロナウイルスによって、世の中の常識が壊れつつある今、愚者について考えてみるのもいいかもしれません。
さて、今週の予定を書きます。
9/6(日) 渋谷モディにて11時から16時まで待機予定です。
もし何か気になることがあれば、お気軽にご相談下さい。
またZOOMによる鑑定も受け付けております。