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モニター体験その3「河童伝説を知る老人12」

河童は唐々沼でやっとその足を止め、ずっと河童の肩に乗せられていた少年の足が、やっと地に付いた。
途端、少年はヒザを折ってくずれるようにへたりこみ、見開かれた目はうっすらうるんでいた。
「・・・弱虫。」
「怖がらない方がどうかしてる!!」
少年の感情はもはや恐怖を通り越して、無茶をした河童への怒りになっていた。
「でも外、出られた。とりあえず帰って来たけど・・・。」
その時になって、少年はやっと自分が唐々沼まで連れて来られていた事に気付いた。
河童の走る速さに、周りの景色など全く見えていなかったのだ。
「夜中に外出て、どうする?もしかして、ずっとここにいる決心ついた!?」
「ちっ・・・違う違う!!」
河童のカン違いを大きく首をふって否定した少年は、隠していてもムダだと、河童に深刻な顔を向けた。
「うちの外に自警団がいた。河童どん、村の誰かに姿見られたんだろ!?」
「失礼!すれ違ったから、ちゃんとあいさつした!」
「するな~っ!!」
少年は大きくなりすぎた声にハッとして、両手で口をおさえた。
村からキョリがあるとは言え、夜は声がどこまで届くのか分かったものではない。
ここにいる事が知られれば、また自警団が河童を捕らえに来る・・・。
のんきにアクビをする河童のほおをつねって、少年は河童の耳・・・と思われる場所に顔を近付け、声をひそめた。
「自警団が出はってる。多分、河童どんを捕まえる気・・・!!」
「捕まえる・・・?なぜ?オイラ何もしてない。。きゅうりも最近自家栽培。」
「でも捕まえる!!」
今だ危機感を持たない河童に、少年は肩をつかんで激しくゆさぶり、涙声で必死にうったえかける。
「とにかく今日はもう河童どん帰る!!」
「う~・・・分かった・・・。でも約束してけ!!今度いつ来る!?」
河童は少年の腕をぐっとつかんで詰め寄った。
その顔には、また不安がにじみ出ていた。
「また来なくなるんじゃないか・・・?」
「来る!!」
「いつ!?」
「皆が今日の事忘れたころ、絶対また来るから・・・!?」
村の方角から聞こえて来る、雪を踏みしめる音と怒声。
少年は言葉を切って、音の近付いて来るのを聞いている事しか出来なかった・・・。