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全ては予想でしかない

「あの話・・・全部ホラなんですか?」
「当たり前だろう!深さ50mの谷底から生きて帰ったとか、クマと一晩中格闘しただとか。そんなことできる人に見えるかい?」
いいえ、全く・・・。
「ウチの母を取り合ったって話もね、お向かいの三助さんとすもうして、父はハデに負けてねぇ。ろっ骨を折っちゃったのよ。それをかわいそうに思った母が父と結婚してあげたって、全く逆のことなのよ。」
あんなに得意げに、全部で6回も話した(サムさん談)のにあれもウソだったのか・・・。
「四六時中よっぱらっている103歳のじいさんの昔話なんて聞くだけムダだよ。みーんな自分に都合のいいように修正しちゃってるからね。」
「そうですか・・・。」
僕らは今までの情報を元に、河童事件が今から約7、80年前に起こったものだと考えていた。
だとしたら、喜造じいさんの年代はちょうど河童事件が起きた頃20前後には確実になっていたはずだ。
半世紀以上も前のこととは言え、河童が現れ、子どもが1人消えたほどの大事件なら鮮明に覚えているだろうと思っていたんだけど・・・。
僕は縁側で、いつの間にか大いびきをかき出した喜造じいさんを見た。
時々いびきが止まったかと思えば、口をもごもごと動かしてこう言う。
「酒が足らねぇぞぉ・・・。」
寝ても覚めてもお酒ですか・・・。
このまま起きるのを待っても、この人の言うことはアテにはできなさそうだ。
「一体うちのじいさんに何を聞きに来たんだい?何だったら、私が代わりに聞くよ?」
「あ~・・・でも・・・。」
うーん、確かにあまり友好的で無い河童の話をストレートで聞くにはちょっと勇気がいるなあ・・・。
何かを聞きに来たと知られてる以上はサムさんのジンモン術、「関係無いところから入ってそれとなく本題に持ちこむ」ってことも不可能だし・・・。
それに、喜美子さんの年齢は83歳だって聞いた。
あくまで僕らが予想した年数ではあるけど、河童事件のことを直接知ってる可能性は低いような気がする・・・。
「コータ、物ハ試シ、ダヨ。」
今だショックから抜け切れずに机に沈んでいたサムさんが、僕を見上げてそう言った。
そうだよね、多少やな顔されたって僕らは本当のことを知りたい、そして河童様に会うんだ!
僕らは河童様に会い隊!
忘れるな副隊長!
・・・でもそれだったら隊長が先頭切ってくれればいいのに・・・。
眠る喜造じいさんに何かとちょっかいを出している隊長に一瞬だけ疑問を持ってから、僕はストレートに質問をぶつけてみた。

そして、その瞬間から部屋の空気が一気に変わることになる・・・。