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いい人?悪い人?

「誰のおかげであの魚釣れたと思ってんの?」
なんとかはぐらかそうとそうとした僕らだったけど、それを言われちゃおしまいだよ。
弱味をしっかりとにぎりしめ、河原は自信たっぷりな顔で笑った。
その上こないだのライギョ事件で、河原はすっかり弥恵さんを味方にしてしまったのだ。
ヘタには逆らえないんだよね・・・。
ちなみにあの時のライギョは今、森崎家の玄関のシンボルになっている。
「タイガ・・・もういいんじゃない?河原になら話してもさ?」
「うぅ~~~~~ん?」
沼から上がって来たタイガは、きびしい顔をして腕を組む。
「ここまで知られちゃ仕方ないよ、な?」
「・・・分かったよぉ・・・。」
「その代わり!!これで魚の借りはナシだからな!!」
「ハイハイ、もう言わないわよ。」
と言うワケで、僕ら秘密組織『河童様に会い隊』は軍曹殿をバックにひかえた河原に洗いざらい白状してしまったのだった。
説明してるうちにタイガの方も熱が入ってきて、隊員心構えを高らかに叫んでいた。
「ふーん・・・じゃあここがおばーちゃんが言ってた唐々沼かあ。」
「河原のおばあちゃんも河童“様”だって?」
「うん、様付け。はじめ聞いた時おっかしくて笑ったらすっごいおこられちゃってさ。絶対ここには近寄るなって言われたの。」
「どうして?」
「危ないからって、それだけ。」
どうもおかしい。
この村にいる十朗じいさん以外の人たちは、河童様を悪いものとして見ているようだ。
紀恵おばあちゃんは十朗じいさんが河童様に洗脳されてるとか言ってたけど・・・。
「あっ、じゃああの人に聞いてみればいいんじゃない?村のはずれの方に住んでる画家のおじーさんに。」
「十朗じいさんのことか。お前なんで知ってるんだ?」
「おばーちゃんが言ってたの。あの人は河童様の手先だって。」
・・・やっぱり河童様がいい人(?)っていう説はずいぶんと少数意見のようだ。
そして唯一その説を説く十朗じいさんは河童様の手先だの洗脳されてるだのと・・・いいうわさが全くない。
「そんなことないッ!!河童様も十朗じいさんもいい人だッ!!だって十朗じいさん、あんな目細いけどすっげぇ視野が広いんだぞ!!」
それはいい人の理由にはならないよ・・・。
一体どっちの意見が正しいんだろうか・・・?
どっちにしろ、会ってみないと分からないよね。