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おにぎり同盟

――孝太・・・。

・・・母さん?

――孝太、どこへ行ったの・・・?

・・・僕を探してる。

――ごめん・・・ごめんねコータ・・・。

泣いてるの?
・・・今更、だと思うよ。

――孝太、朝飯・・・。

・・・は?朝飯?

――・・・クワガタで挟んで・・・。

クワガタで!?何を挟むのさ!?

――・・・鼻。

は・・・!?



「いっっっだい!!痛い!!鼻!ちぎれる!!」
「お、起きた。」
眠りから一気に突き落とされた僕を、目の前にチラつく黒い影と、その先で笑うタイガが迎えた。
「・・・タイガ?何し・・・ってぇ!!?」
それと、鼻に走る痛み。
あわてて鼻からぶら下がっていた黒い影を取っ払う。
タタミに落ちたそれは、黒光りする立派なハサミを持ったクワガタだった。
「5秒だぞコータ。もっとネバれよ~。」
残念そうなタイガの手にはストップウォッチが握られている。
「なんで寝起きドッキリみたいに起こすんだよ!?」
「ドッキリじゃない!ちゃんとしたカクセイ・・・?術だ!!」
「クワガタで寝てる奴の鼻挟むのがか!?」
「こんなのやさしいもんだ!母ちゃんのカクセイ術ときたらそりゃあ・・・もう・・・。」
タイガが言葉を切って青ざめる。
僕もいろいろと想像してしまって、まだマシだったと心底思った。
「母ちゃんが朝飯食えってさ。ジジョーチョーシュはその後だって。」
「分かった、ありが・・・と?」
僕はタイガに更なる異変を見つけて、お礼を言いそこねた。
タイガは、ストップウォッチの他にずいぶんといびつな形のでっかいおにぎりを持っていたのだ。
「・・・つまみ食い?」
にしてはデカすぎないか?
「違う。これは『同じ川のヌシを釣る』っていうコトワザでだな!」
そんなことわざ聞いたことないよ。
「・・・『同じ釜の飯を食う』じゃ・・・?」
「そう、なんかそんなんだ!」
そんなんでいいのか・・・。
「つーわけで、ほい。」
そう言ってタイガはおにぎりを半分に割って、片方を僕に手渡した。
「ほい・・・って、何?」
「コータ、朝飯を食った後、恐らくお前は鬼ババによる厳しい尋問を受けることになるだろう。」
お・・・鬼ババ・・・。
タイガのしゃべり方がどっかの軍曹みたいになってる。
なんだか自分が戦地におもむく兵隊にでもなったようだ。
「辛い戦いになるだろう。だがいいかコータ!昨日起こったことは、絶っ対誰にも言うな!」
「昨日・・・って、十朗じいさんのこと?どうして?」
「どうしても!!では、ケントウを祈る!カンパイ!!」
そう言ってタイガは僕に渡したおにぎりに自分のを押し当ててから一気に口にほおばってしまった。
つられた僕もあわてて口につめ込み、なんとかかみ砕いて飲み込んだ。


ここに、おにぎり同盟が成立した。


「・・・むっ!・・・うぐぐ・・・。」
「うわあ!!バカ、詰め込み過ぎだよ!!戻すなぁー!!」

・・・イマイチこいつといるとしまらないな・・・。