第参幕~連れ去られしは我等が主~


十三、予想だにしない言葉

「或る日何の前触れもなく・・・壯火城は陥落した。幾千もの妖怪が、空から一斉に奇襲をかけたんだ・・・!その時の壯火の空は、妖怪たちで埋め尽くされて真っ黒だったって・・・!!無人となった壯火城にはその後、妖怪たちが住み着き、それから鬼嶋半島上空は常に暗雲が立ち込めて、あの日以来、空が晴れたことは一度もない・・・。・・・四季は、壯火城陥落直前より、その幾千もの妖怪をまとめあげる大将の参謀として立ち回り、この襲撃を進言したのも彼奴だと言われている・・・!」
戦人であれば誰もが知っている惨劇。

どんなに強靭な武力、どんなに強固な城を持ってしても、妖怪には敵わない。

当時、壯火城陥落を聞いた多くの人間が、そんな絶望へと突き落とされた。
不気味な静寂に包まれた謁見の間、不規則に揺れる蝋燭の炎が、皆の不安気な顔を照らし出す。





「だからどうだっていうんだ。」





何物にも動じない、強い意志の込められたこの声こそ、まさに長たるに相応しい。
「どんな場所だろうと、あいつがいるなら迷いはない!」
若き忍たちの顔から、不安が消え失せる。

誰もがこの言葉を待っていた。

「当然!ちゃっちゃと片付けっちまいましょ!」
「おいらたち五人が一丸となれば、勝戦の確率も零じゃないっす!」
「所詮殺戮ばかりの低級愚族。知恵のある人間の力を思い知らせてやればいい。」
「華羅姉様に忍になったこと、報告するんだから!」
忍軍の士気さえも引き上げる、強く、純粋な志。
これこそが真矢の長たる才なのかもしれない。


高まる士気、長たる才



華羅姫奪還に燃える一同に、しかし我尋は、予想だにしない言葉を発した。



「・・・真矢、貴様よもや、娘を連れ戻すつもりではなかろうな?」