第壱幕~姫を護りし者たち~


十二、心、此処にあらず

華羅には何故隼人がこんな質問をするのか、分からなかった。
衰退したとはいえ、今はまだ戦乱の世の直中。
心など有りはしない、国同士の政略結婚など、当たり前のように行われている時代。
それなのに、何故そんな無意味な質問をするのか。

答えたところで叶うはずもないのに・・・。

しかし、そんな困惑とは裏腹に、華羅の頭は一人の名前を見出だしていた。


「――真矢か?」


まるで華羅の心を見通したように、隼人が言った。
言葉を呑み、無表情を装った華羅だったが、月に照らされた白い頬が、朱を落としたように染まった。

それが答えだった。

「やっぱりな・・・。」
「やっぱりって・・・分かってて聞いたのか!?」
「みーんな、知ってるよ。剛蔵なんて目茶苦茶面白がってやがる。」
華羅が頭を抱えた。
あんなにあからさまなら当然だろうが・・・。
「・・・分かってたのなら、何故改めて聞いた?」
恨めしそうに隼人を睨み付ける華羅の顔は、未だ赤く、美しく染まったままだ。
「別に・・・ちょっと確認してみたかっただけだ。」

華羅の心は、真矢のものなのだと。

「・・・隼人?」
「・・・いや・・・なんでもない。」


華羅の心は、真矢のもの。


俺の元に、ありはしない・・・。


誰の元に心はある