「あのさぁ」
「なによ」
「ぶっちゃけ仕事やめたいわけ」
「え?もう?」
「もう?って、これでも9ヶ月働いてるんだけど」
「9ヶ月しか働いてないじゃん」
「でもコレまでの職歴上・・・」
「在職最短記録8ヶ月でしょ?しかも会社の都合での退職。何度も聞いた。飽きた」
「最短記録更新にならないだけマシだと思わない?」
「・・・別に」
「1年持てばいいほうだと思うほうだからさぁ、9ヶ月でも長く感じるんだけど」
「社会人デビューしてから9年経つくせに」
「う・・・」
「何でやめたいの?」
「合わない」
「仕事が?」
「仕事も」
「仕事が合わないって理由でコレまで何度かやめてるよね」
「それは合わなさそうだと分かっていながらも入社するから」
「分かってて何で決めちゃうの?バカ?」
「バカ言うな」
「必然的にやめちゃうだろうなって思うじゃん」
「とにかく仕事に就かないとまずいような状況に陥ってるから、仕事を選んでられないんだよ」
「平井賢が後押しした一人暮らしのときとか?」
「そうそう。詳しく話すと大抵断る会社ばかりでさ、やっと面接の話にこぎつけたときは・・」
「あれは面接した会社側が異常だっただけ」
「今思うとそうかもしれない」
「仕事のほかに何が合わないの?」
「人間関係」
「どこもそういうことで悩むことは当然だと思うよ。一人でやる仕事じゃなし」
「そりゃわかってる。今までも苦労してきたつもり」
「じゃあどうってことないんじゃない?」
「それがさぁ」
「なによ」
「今までは相性が合わない人って大抵一人ぐらいしかいなくて、しかも毎日顔をあわせるわけじゃなかったのさ」
「相性が合わない人ってどんな人なのよ」
「どこにでもいるお局さま的な人」
「あーわかる。しかもそういう人に限って目をつけられるもんね、あんたは」
「でも今回はそのお局さま的タイプと、気難しそうな人が自分の周りに複数いるわけ」
「毎日顔をあわせなきゃいけない、と」
「何かあると大抵自分が原因で、怒られても反論すらできない」
「自分が悪いんなら反論なんて無理だわさ」
「かばって欲しいとは思ってないけど、誰の援護もない」
「むしろ怒ってる人側の援護とかしたりして」
「ビンゴ」
「泣きっ面に蜂だね」
「仕事が合わないかもと思っている中でこの一斉攻撃ははっきり言って萎えるよ」
「それを乗り越えてさぁ」
「怒られた後も合わない仕事を続けなきゃいけないし、次の日もそのまた次の日も仕事でどーやって?」
「趣味とかでストレス解消とかすればいいじゃん。第一、趣味のための金稼ぎでしょ?」
「やめたくなるもうひとつの原因がその辺にあるんだなこれが」
「・・・金銭面?」
「そう」
「給料安いの?」
「残業すればそこそこなんだけど、問題はそこじゃなくて」
「どこよ?」
「こないだの夏のボーナス」
「あー・・・・・・」
「あれ見た瞬間、生活がやばくなるって思った」
「あれは痛いよね。金額が」
「平気で発表する社長の性格も痛いと思う」
「もともと採用されたときに言われた額ほどもらえるとは思ってなかったんでしょ?」
「思ってた。コレまでの会社もそんな感じだったし。でも今回はひどい」
「パートのときにもらったボーナスより低いもんね」
「それで食料とかが値上げしてるでしょ?家賃も高いし」
「やってられないと」
「冬のボーナスもこんなもんかって思うと、士気が下がるって会社の人が言ってた」
「もうちょっと家賃安いとこに引っ越せば?」
「親にまたあれこれ書いてもらうのかよ」
「他に保証人いないじゃん」
「もうすぐ定年だから保証人になることすら難しくなってくるし、こういう話になると大抵・・・」
「『名古屋に戻ってきたら?』って言われる。こないだ京都でも言われたんでしょ?」
「戻ったら絶対引きこもりになるね」
「自己嫌悪バンザーイって感じで?」
「みじめじゃん。いつも横浜土産を渡してる隣の家の人に会ったらなんて言えばいいんだよ」
会話はまだ続く・・・・・・・・・・