なんの抵抗も違和感もなく、実にスムーズに、新しい朝が来た。

まるで先週や先月、ずっと前からそうしていたかのように、わずかの躊躇も逡巡もなく、その新しい朝に、僕は自宅を出発した。

昨日と変わらない陽が昇っている。

同じように暑くなるんだろう。

僕も何も変わっていない。

旅の始まりから終わりまでで、一周して戻ってきただけだ。

同じ場所から一歩も動いていないともいえる。

 

何の仰々しさもなく始まる旅もある。

漫画や映画、小説ではないのだ。

ただ寄り道が終わって、本道に入っただけだし。

始まりに言えることって実はいつもなにもない。

願望のような抱負を言ったところで誰の役にも立たないし、暑苦しい意気込みなんて全然言いたくない。

言ったところで大体なにも思った通りになんかいかない。

始まりには、ただ始まるだけ。

別に仔細なし。胸すわって進むなり。

 

ただし、僕は今、あの聖なる寄り道の終わりを宣言し、かの偉大なる回り道に別れを告げたいと思う。

僕は新しい方へ行く。

心配ならいらないよ。

いざという時が来たら、消えて無くなるだけさ。

そうしたら、他の人たちも、僕のことなんかさっさと忘れて、それぞれ幸せに暮らしたらいいんだ。

 

期待も希望もなければ、憂鬱も絶望もない。

始まりには、ただ始まるだけだ。

そして、いざという時が来たなら、さあ、ただ、消えて無くなるだけだ。