体外受精では、卵子と精子を体外で受精させた受精卵を育てます。本来、受精卵は母体の子宮の中の温かい環境で成長しますが、体外ではインキュベーターがその役割を担います。培養器の温度設定は通常37℃前後に保たれ、人間の体温とほぼ同じです。しかし本当に37℃がベストなのかは長年議論されてきました。
最近ではインキュベーターの温度制御技術が進み、±0.1℃程度まで温度を安定させられるようになりました。そこで研究者たちは、これまでと違う設定で培養した場合に結果がどう変わるかを調べてみました。具体的には、36.6℃と37.1℃というわずか0.5℃の差で胚盤胞を培養し、移植後の妊娠成績を比較するというものです。

研究の概要
ベルギーの生殖医療センターで行われた試験では、IVFを受ける患者さんを無作為に2つのグループに分けました。一方は胚盤胞を36.6℃で培養し、もう一方は37.1℃で培養します。最終的に181名の患者さんが胚移植を受けました。研究チームは移植後7週目に心拍が確認された「臨床妊娠率」を主要な評価項目とし、その他に出生率なども比較しました。まとめると、試験のポイントは以下の通りです。
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比較した培養温度: 36.6℃ vs 37.1℃
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参加患者数: 181人(各約90人)
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培養・移植: 胚盤胞をそれぞれの温度で培養し、5日目に移植
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評価項目: 移植後7週目の心拍確認(臨床妊娠率)など
結果
結果として、どちらの温度条件でも臨床妊娠率に大きな差は見られませんでした。具体的には、どちらも約50%前後の臨床妊娠率で、統計的にも有意な違いはありませんでした。また、出生率やその他の評価項目にも明確な差は確認されませんでした。これらの結果から、わずか0.5℃の温度差では胚の発育や妊娠に影響がないことが示されました。
まとめ
この研究により、胚盤胞が小さな温度差に強いことがわかりました。つまり、培養器を37.1℃に設定しても36.6℃に設定しても、妊娠率には大きな違いがなかったのです。この結果は患者さんにとっても安心材料になるでしょう。とはいえ、だからといって培養環境の管理をおろそかにして良いわけではありません。体外受精では温度以外にも培養液の成分や酸素濃度などさまざまな条件が関わります。今回のような細かな条件まで検証する研究は、より良い体外受精技術の確立に役立つ重要な一歩です。今後もこうした研究の積み重ねで、体外受精の成功率がさらに高まることが期待されます。実際、多くのクリニックではこれまで通り約37℃で胚を培養してきましたが、今回の研究結果はその方法が正しかったことを裏付けてくれました。このような研究成果は、不妊治療に取り組む人たちにとって心強いニュースとなるでしょう。
