「お疲れ様でした。
明日はマナブのロケで6時にお迎えにあがります」

「はーい。早えなぁ」

「ロケ先が……
道路状況も考えるとどうしても……」

「わかってるよ。
ゴメンゴメン、言ってみただけ。
じゃあ、明日もよろしく〜」


マネの車が出るのを見送って踵を返した。


このところの忙しさに、つい愚痴ってしまった。
マネに当たるなんて…はぁー失敗失敗。
ため息をひとつ吐いてエレベーターに乗り込んだ所でケイタイが鳴った。


「久しぶりじゃん」
「久しぶり、○日か△日時間ある?」
「あーどっちも仕事だなぁ。△日は昼までだけど」
「じゃあ△日会おうよ。
オレも午後から仕事だから1時間くらいしかないけど。時間と場所はまた連絡するから。
じゃあね」


唐突にきた電話は唐突に切れた。


5人で活動している時は何日も何週間も会わないでいる事なんて考えられなかった。
休止前はそれに耐えられるのか不安だった。
だけど、いざ一人での活動が始まってみれば、それなりに忙しくて目の前の事柄に必死で。
そのうちに一人での活動にも慣れて来た。


無性に寂しくなることもあるけど…


時々ラインでのやりとりはあるものの、メンバーの活躍はほとんどマネージャーからの報告で知ることが多い。
今年は新年会も出来なかった。
それだけ皆んな忙しくしているって事は喜ばしいこと、なんだけど…


そんな時の突然のニノからの誘いだった。










「えっ?ここ?」


約束の日、ニノに指定された場所に行ってみると、そこは…
アラフォーの男が待ち合わせをするにはあまりにもこ洒落過ぎているカフェだった。


案内されたのは、女子達がお茶とお喋りを楽しむ店内を通らずに行けるオープンテラスの中でも奥まった人気のないテーブル。
そこにはコーヒーカップを傾ける懐かしい顔。
木漏れ日を浴びて光に溶けそう。
カメラマンがいたら良いグラビアが撮れそうだな。


そんな何年も会ってないとかじゃないのに、懐かしいと思う自分に可笑しくなった。


「お待たせ」


向かいの席に座った俺に開口一番


「何、ニヤニヤしてんのよ」


ニコリともしないで憎まれ口のつもり。
おまえ、頬骨と口角上がってるからな。


「ニヤニヤしてんのはおまえだろ」


店員さんに同じコーヒーをオーダーする。


「時々YouTube見るよ。
登録者数すげぇじゃん」

「でしょ?んふふ。
そっちこそ、舞台とか映画とか忙しそうじゃん」

「観た?」

「観てない。Blu-ray頂戴よ」

「観ろよ!まあ、Blu-rayはやるけど」

「こっちも忙しいんだよ。
メンバーには会ったりしてる?」

「翔ちゃんにはちょこちょこ。
松潤は殿で忙しいし、リーダーはラインくらいかなぁ。そっちは?」

「オレも会ってないなぁ。
翔ちゃんとも前に仕事で会ったっきりだ」

「で?今日は?
時間ないのに会いたいって、何かあった?」

「いや?会いたくなったから」

「忙しい時間の合間を縫って?
1時間しかないのに?」

「うん」

「そうなんだ……」

「前に言ったじゃん。
お前にはこっちから連絡して会いに行くって」

「あー?
そう言えば、だいぶ前に言ってたような……」

「そう言うこと」

「……そう言うことか。
……くふふっ」





いい天気だねぇ
そうねぇ











終わり









ちょっと前の男二人でこ洒落たカフェでお茶をしたと言う話より。
だけど、蓋を開けてみれば会ってるやん!
呑んでるやん!
またしても妄想を追い越す現実。
ありがたやありがたや。
それだけで朝っぱらから泣けるオタク。
歓びのハードルが低くなったもんだと自分にツッコミを入れました。
こぼれ落ちる現実が妄想の糧。
誰でも良いのでまたお願いします。