〜 エピローグ 3     side 潤 〜


「だから、じゃねぇの?」


ニノと相葉くんのイチャイチャに疲れて来た俺の後ろから降って来た声。
いつの間にか翔さんが立っていた。


「雅紀の本当に必要な物を与えたのが、ニノだったんだろう。
そして、それには相当の覚悟が必要だっんじゃねぇ?
誰にでも出来ることじゃない」

「翔ちゃん!
いい事言うなぁ」


今ではすっかり打ち解けて、会社であろうが所構わず副社長を翔ちゃん呼びする相葉くんがブンブンと首を縦に振る。


「俺も、まさか、あの、相葉雅紀が忠犬ハチ公になるとは思わなかったけどな」


カラカラと笑う翔さんをちょっとだけ睨んだ相葉くんだけど、次の瞬間には全てを受け入れた顔で


「俺はね、かずの為なら犬にだって何にだってなれるよ」

「まあくん♡
でもでも、まあくんのカイトになるのはオレだからね」


あーあ、また二人の世界に入っちゃった……



慣れたとは言えこのままでは埒が開かない。
さてどうするかと俺と翔さんが見合ったところで救世主の声。


「相葉ちゃーん。アポの時間に遅れるぞー」


大野さんがゆっくりと階段を降りて来た。
その声に腕時計を覗いて、しまったと言う顔の相葉くん。
じゃあ行って来るね、行ってらっしゃい、とキスをしようとする二人を慌てて止めた。


「さすがにここでは勘弁してくれ!」


いいところを止められて不満そうに、渋々と、やっと出かける気になった相葉くんがニノに手を振って大野さんの元へ。


「待ってたんだよ、おーちゃん」

「おーちゃんはやめろ」

「だって課長代理はイヤなんでしょ?
本当は部長にって言われたのに、面倒ごとが増えるからイヤだって断ったんじゃん」

「役職なんて要らないんだよ。
俺は半月でノルマ達成して残りの半月は休むって決めてんの」

「それだって無理やり社長に納得させたくせにー」

「いいんだよ!納得したんだから」


また始まった


「まるで子供だな」


これから営業に出掛けていく、エース二人の背中を呆れて見ていた。


「でもね、今のまあくんはオレが初めて見た時のまあくんと似てるの。
きっとあの姿が本当のまあくんなんだよ」


嬉しそうに見送るニノの顔は、慈愛を湛えたまるで聖母の微笑み。


「良かったよなぁ、激重同士で超お似合いだよ。
悪いけど、俺はどっちの相手も出来ないわ」

「こっちだって翔ちゃんの相手なんてお断りだよ」


翔さんのあけすけな物言いにぷっくりと頬を膨らませているニノ。
勤務時間中にこっちでも一戦始まりそうで、まあまあと間に入った。
だけど、俺も本心は翔さんと同感で。
長年ストーカーまがいに想いを寄せるなんてエネルギーは俺にはないし、それを喜んで受け入れる気持ちもわからない。


幸せそうな二人を見ているのは温かい気持ちにはなるけど、暴走しそうになる二人を毎日止めるのもくたびれる。


やっと仕事をする気になって真剣な顔でモニターと向き合ったニノ。
普通に仕事をしているだけ。
それでもその表情は以前とは全然違っていて。
前からあった頭の良さや愛嬌や時折見せる儚さ、それに今は強さも加わってなんとも頼もしくなった。
同時に相葉くんは以前と同一人物とは思えないほど、底抜けの明るさを見せるようになった。


人の想いは他者を変える力があるとつくづく思い知らされる。
まぁ、恋愛に限った事じゃないんだろうけど。


そんな出会いをし、見事に身を結ばせた二人をちょっとだけ羨ましくもなった。

















終わり




後書きはお知らせとともに明日にさせていただきます。