「いらっしゃいませ〜」
夏真っ盛り
今日もレストラン『cousIn's』は大盛況。
「こんにちは、潤さん」
「いらっしゃいませ。幸田様金田様」
連日の猛暑にも関わらず、常連さんも相変わらず。
これだけ通ってくださると自然とスタッフとの間も縮まって……
いや、このお二人は特別か。
「ムロくーん、毎日暑いけど元気?」
オープンキッチンの奥にいるスタッフにも声を掛けてくださる。
「おかげさまで。
さるにまで声を掛けていただき、有難い事でございます」
ぺこりと頭を下げるスタッフにキョトン顔の常連さん。
「なんか知らないけど、マイブームなんだって〜
まぁ、気にしないで。
さあ、ご案内しますよ。こちらへどうぞ〜」
妙なものに嵌っている先輩にも、ドル箱のお客様にも臆する事なく常に通常運転。
距離感バカのフウマがお客様を席へと案内する。
そのオレンジ色の後頭部に向かって
「ねえ、最近相葉さん見ないんだけど。
何かあった?」
常連さんの疑問はごもっとも。
ここの所、雅紀は滅多にこの店には来なくなった。
実は今、俺と雅紀は一緒に住んでいる。
俺たちの今があるのはこのお二人のお陰ではあるのだけれど、未だに言えずにいる。
と言う事で、フウマの助けを求めるような視線にも気付かないふりを通した。
この店での偶然の出会いから少しずつ距離を縮め、想いを通わせ俺たちは今この店の隣にある俺の家で一緒に生活している。
俺の家と言っても借家だけど。
都心に勤める雅紀が通勤には不便なここに何故と、これまでの話を読んでくださった読者の皆様は思うかもしれないが
それには理由があって
雅紀の勤める美容室『S&S』の新店舗がうちの最寄駅の駅前に出来ることになり、雅紀がそこの店長に決まったからだ。
いい機会だとばかりに雅紀は早々に部屋を引き払って俺の家に引っ越してきた。
元々は大野さん家の離れだった家。
随分と年季の入った日本家屋だけど、広さは十分にあって二人で暮らすのに問題はなかった。
つづく