「フウマ?」
すぐ隣で話しかけてるのに全く俺の言葉に反応しやしない。
視線は一点に釘付けになったまま。
「……潤さん、あの人は?」
身体も視線も固まったまま、それでも俺の存在は忘れていないらしい。
「あの人は雅紀の所の社長。
『S&S』のオーナーだよ」
「名前は?」
「櫻井さん」
相変わらず俺を見ることもなく、視線の噛み合わないままの会話。
まあ、フウマに何が起こったのかはだいたいわかるけどね。
それにしてもちょっと酷く無いか?
俺だって、お前の雇い主だぞ。
そうこうしているうちに上田に先導された櫻井さんが店のドアを開けた。
途端にダッシュするオレンジ頭。
あの硬直状態からよくそんなに素早く動けるもんだ。
瞬く間に櫻井さんに、詰め寄り……
たかったんだろうけど、しっかりと番犬に間に入られた。
上田にしてみれば大事な大事な兄貴に不躾に近づく不審人物。完全に排除対象。
大荷物を抱えたまま牙を剥いている。
「櫻井さん!オレ、菊池フウマって言います!!
潤さんの店で働いています!」
フウマは番犬が思うように動けないのをいいことに上田の肩の上から必死のアピール。
フウマのダダ漏れの好意に番犬が牙だけじゃなく目も剥いた。
手に持った荷物を素早く置くと臨戦体制でフウマと対峙する。
「どけよ!」
「何もんだお前!」
「菊池フウマだって言ってんだろ!
あっ、櫻井さん♡オレ「兄貴に近寄るんじゃねぇ!」
「もうっ!お前こそ、何なんだよ!」
お互い敵対心剥き出しで揉み合っているけど、二人とも無闇に人を傷つける人間じゃあないので、殴り合いにはならない。
雅紀はクスクスと笑っているし、瞬時に察したであろう智もニノも呆れたように二人のやり取りを見ている。
「上田、やめなさい」
いつまでたっても終わらないいざこざに、業を煮やした櫻井さんが笑顔を浮かべたまま上田を諌めた。
つづく