「はいっ!兄貴申し訳ありませんっ!」
途端にファイティングポーズ解除の上田。
鼻息はまだ洗いままだけど、フウマから距離を取った。
「ふうん……菊池くんって言うんだ。
君、かっこいいね。
ふふっ、上田と気が合いそうだ」
あくまでスマートに、だけどそこは職業柄なのか菊池を上から下まで見渡してニコリと笑った。
櫻井さんの、自分の容姿を熟知した上でのキラースマイル。
菊池はもう膝から崩れ落ちそうだ。
目の前の光景が面白く無い上田。
「オレがこんな奴と気が合うわけ無いじゃ無いっすか」
控えめに、独り言のように、それでも珍しく櫻井さんに反論する。
愛しの兄貴の返事を密かにを期待していたのに、櫻井さんの感心はすでに別の場所へ。
成り行きを見守っていた俺たちの方へツカツカとやって来た。
「あなた方も潤くんの関係者ですか?」
声を掛けたのは、フウマと上田のやり取りなんて完全に対岸の火事。興味もないとぼんやりと騒ぎを眺めていた智とニノ。
いきなり目の前に落とされたキラースマイルに二人揃ってポカンと口を開けた。
「ねぇ、何でこんなにイケメンが揃ってるの?
潤くんの店って採用基準ルックスなの?
だけどせっかくのビジュアル活用しない手はないよね。
お二人カットモデルやりません?」
はあっ?
智とニノの口がさらに大きく開いた。
「そんな面倒くさいこと、やるわけ無いでしょ」
ニノは一刀両断。だけど、
「カット代ただ、だよな?
都会には出たくねえけど、相葉ちゃんのとこだったらやってもいいぞ」
「何言ってんの!
自分の顔が晒されるんだよ!」
ヘラヘラと安請け合いする智にニノが慌てる。
「別にいいんじゃねぇ?」
「もうっ!そんな簡単に…」
「あーっ!カットモデルなら俺がやります!!
櫻井さん!俺!どうです?」
「うん、菊池くんも是非。
この店、幸先がいいなぁ」
「お前、しゃしゃり出てくんじゃねぇよ!」
フウマと上田も参戦して三つ巴ならぬ四つ巴。
「あーあ、中々のカオスだね」
どさくさに紛れて後ろから腕を回して来た雅紀が俺の顔のすぐそばでニヤニヤと笑う。
「放っておいていいの?」
胸の前で交差された雅紀の手の甲を軽くつねりながら聞くと
「いいんじゃない?面白そうだし」
つねられた手を軽く振りながら、まだやいのやいのと言い合っている様子を楽しそうに見ている。
確かに、楽しそうではある……かな。
だけど、早く昼飯を済ませないと…まだやる事山積みなんですけど。
いっこうに終わりそうも無い騒ぎを見ながら先行きが少しだけ心配になった。
終わり