「俺たちは何をすればいい?」


俺は何の為にここにいると思ってるの!
後ろでクスクスと笑っている新店舗のスタッフの視線も恥ずかしくて、一刻も早く空気を変えようと頭にタオルを巻いた。


今日は業者からシャンプー台やミラーなんかが届く。
業者を手伝ってそれらをセッティングしていく。
真夏の暑さに加えて重い機材に皆んなあっという間に汗だくになった。


運ばれて来た荷物を全て搬入し終わったのは昼近くになってだった。
美容室独特の設備が並ぶと途端にそれらしくなる。まだまだやる事は山ほどあるけど、雅紀の店が出来上がって行くのを目の当たりにするのは嬉しかった。


タオルを巻いていても滝のように流れる汗を拭いていると、駐車場に一台の高級車が滑り込んできた。


車が停まったと同時に助手席から転がるように降りて来て運転席のドアを恭しく開ける見知った顔。
そして、ちょっとだけ困ったように眉を下げながらそれでも笑顔で降りてくる、高級車が似合いすぎるイケメン。
『S&S』のオーナーの櫻井さんと本店の見習いの上田くんだった。


会うたびに思うけど、上田くんってちょっと変わってる。
綺麗ってこう言う事だと思わせる整った容姿。
ラフな金髪も凄く似合ってる。
体格も細身でしなやか。
それなりの格好をしたら西洋の王族のような見た目。
なのに


車を降りる櫻井さんに控えるその姿。
長い足をガバッと開いて腰を落とし、手まで差し出すその姿はどう見ても任侠映画のそれで。
彼がそっちの人じゃあないのはわかってるんだけど、見た目とのギャップがありすぎて見る度に笑いが込み上げてしまう。


その彼は車のトランクを開けた櫻井さんに仕事をさせないように中身を掻っ攫って、大荷物を両手いっぱいに抱えて歩き出した。
詳しくは知らないけど、どうやら上田くんは櫻井さんに恩があるらしい。
だからいつも一生懸命に櫻井さんに尽くしている。


それにしてもあまりに重そう。


「フウマ、荷物持ち手伝ってやってよ」


うちで一番力仕事に向いてそうな若手に声をかけた。




いつもならこう言う時には余計な事を言いながらサッと動くはずのフウマの返事がない。
不思議になって振り返ると、棒立ちで口をあんぐりと開けたまま、一点を見詰める今まで見たことの無いフウマの姿があった。







つづく