「いやぁ、悪いねぇ。
でも助かるよ。
あっ、せっかくの貯金には手をつけないでね。
給料から天引きさせて貰うから。
毎月少しずつね」


俺の貯金の心配までしてくれるなんて、なんて良い人なんだ。
感動しつつ分かりましたと返事をした。


んっ?天引き?給料から?


「じゃあ、決まりね!
いやあ良かった良かった。これで大野くんに叱られなくてすむよ。
あっ、出社は怪我の様子次第で良いからね。
無理はしないでね。
出てきたら、くっそ忙しいと思うから」


じゃあ後はよろしく〜と櫻井さんに言い残した社長は、相変わらずの軽い足取りで階段を降りて行ってしまった。


……えーと
もしかして、今、俺ここへの入社が決まった?
社長の背中を呆然と見送ってニノを振り返ると、呆れた様に俺を見ていた。


「いいの?なし崩し的に決まっちゃったけど」

「……まあ、悪くはないと、思ってたし…
迷惑も、かけたし…ねぇ?」

「ふははっ、悪くはないんならいいんじゃね?
ちなみにうちはこのくらいの修繕費が出せない程切羽詰まってないけどな」

「だよねぇ」


櫻井さんがケラケラと笑うと、ニノもそれに続いてクスクスと笑い出した。


「社長の方が一枚上手だったって事だ。
諦めなよ相葉くん。
大丈夫、悪い様にはしないから」


とにかく早く病院へと促されて俺とニノは会社を後にした。







診察の結果、ニノは唇の軽い裂傷で塗り薬が処方された。だけど、後は治療の必要は無しという事だった。
俺はというと、口の中の裂傷と全身に打撲多数。
特に腕は酷くて熱が出るかもしれないと言われた。
ついでに、骨に異常が無かったのが奇跡だとも。
それを聞いたニノが絶対に今夜一人にはさせられないと言って、結局二人で俺の家に帰って来た。


俺としては願ったり叶ったり。
だって、やっと自覚出来たんだ。今まで他人に抱いた事のない気持ちを。
一人の人間を心の底から愛しいと思う感情を。
しかも、想った相手に想われてるっていう奇跡。
そうしたらさ、やっぱり離れたくないじゃん。















つづく