「…なに?」


俺が首を傾げると、松潤とニノはぱっと離れて


「…何でもないよ。さぁ、行こうか」


ニノが俺の背中を押して急かしてくる。
松潤も何食わぬ顔で行ってらっしゃいと手を振っている。
でも、上手く隠したように見える笑顔の下に何かを隠しているのが明らかだった。


それが、仕事上の事なら俺に口を挟む権利はない。
でも、俺には知られたくない。何だかそんな意識が松潤にもニノにも見えるような気がした。
俺に知られたくないって事は俺にも関係あるって事だ。
何だか釈然としないまま、ニノに続いて内階段を上がって行った。






「あれぇ?大野さんいないなぁ」


階段を上がった先もオープンスペースでフロアが一望出来る。
その中の真新しいデスクが並ぶブラックに営業部というプレートが、お座なりに掛けられている。


ただ、そこだけじゃなく、6階のそのフロアには人が誰もいなかった。


「まだ、外に出る時間じゃないよね」


ニノと松潤のやりとりを聞いてから俺と目を合わせないニノ。
早く大野さんに合わせてさっきの出来事を無かったことにしたいんだろう。言葉の端に焦りがみえる。


その時、このフロアに一箇所だけある個室の扉が開いて中から人がゾロゾロと出て来た。


「あっ、相葉ちゃん!」


その集団の中から聞き覚えのある声がした。


「大野さん!
もう外に出ちゃったのかと思ったよ」


ニノがホッとしたように大野さんに文句を言った。


「悪い悪い。緊急の会議だったんだよ。
ほら、社長。これが相葉ちゃん」


大野さんはニノに片手を上げてカタチだけ謝ると、後ろから出て来た男性の腕を引っ張って俺たちの所に連れて来た。


細身で見るからに人の良さそうな出立ち。
言われなければ絶対に社長には見えないその人が俺の目の前で


「おはようございます。
社長の井ノ原です。
相葉さんのお話は大野くんはじめ皆んなから聞いていました。
ぜひお会いしたいと思ってたんですよ」


ニコニコと笑いながら出された右手を反射的にとった。


「初めまして、相葉雅紀と申します。
皆さんお忙しいのに、朝からお邪魔しています」


社長相手に握手しながらの挨拶でいいのか?
と思いながら、でも相手が手を離してくれないんだし、これがベンチャーなのか、それとも井ノ原社長方式なのか。
どちらにしても、この人の良さそうな笑顔に俺の緊張も解けて行った。















つづく