しばらくの間玄関にへたり込んで息が整うのを待った。
それからよろよろと立ち上がると食材を片付け、そのままシャワーに直行した。
汗を流して脱いだ服を洗濯機に放り込む。
いつもは乾燥機任せだけど、思い立ってベランダに干してみた。
そのままそこにしゃがみ込んで、陽射しを浴びて風に揺れる洗濯物をぼんやりと眺めた。


なんか、平和だ……


自分の全てを否定されて、居場所を失って……
自暴自棄になって人を傷つけて、暗闇に丸まっていたのはついこの間なのに。
悔しくて悲しくて寂しくて、心がざわついて眠りたくても眠れず…
そんな日々からいくらも経っていないのに。


今は、嘘のように心が凪いでいた。


ふふっ、状況は何にも変わってないのにな。


今現在、俺は無職でこの先もどうなるかわからない。
頼れる人もいない。
それでも、こんなにも穏やかな気持ちでいられる自分が不思議だった。


それはきっと、何があっても揺るぎなく俺を想い続けると言うあの言葉のせいだ。


涙を堪えたあの時のニノの顔が浮かんだ。
自分を蔑みながら、止められない想いに苦しんでいた。
あの時の飴色の瞳を思い出すと俺の胸にも痛みが走る。
あんなにも切実な気持ちを抱えて俺の側にいたなんて。
その気持ちに気付かないなんて、いったい俺はニノの何を見てたんだろう。


確かに、好きって気持ちはあった。
ルックスも好みだったし、独特の飴色の瞳も綺麗だと思った。
俺の話を笑顔で聞いてくれるところや従順なところも好ましかった。
だけど、その奥に隠れた本当のニノに俺は全く気付かなかった。


誰にも心を開かないで上っ面な付き合いばっかりしていたせいで、人の気持ちにもこんなにも疎くなってた。
それに気付かせてくれたのもニノなんだ。














つづく