何度か鳴らされたチャイムはいったん止んで鍵の回る音がした。
家主の許可もないのに堂々と入って来た侵入者は、しばらくの間あちこちを歩き回ったりカチャカチャと音をさせたりしていたけれど、やがて入って来た時と同じように静かに鍵を掛けて出て行ったようだった。
本当に帰ったのか。
俺は布団の中で息を殺し、じっと様子を伺っていた。
辺りはシンッと静まり返って人の気配は感じない。
それでも慎重に耳を澄ませながら寝室のドアを開けた。
今朝よりもさらにこざっぱりしたように見える室内。
ダイニングテーブルの上には出来立ての親子丼と味噌汁が掛けられたラップを湯気で曇らせていた。
その横には丸っこい字で書かれたメモ。
『ご飯食べてないみたいだったから
良かったら食べてください
冷蔵庫に明日の朝とお昼の分入れておきます』
冷蔵庫を開けるとサンドイッチと焼きそばが入っていた。
俺はそれらを避けてソーセージとミネラルウォーターを取り出し、カウンターの上のバナナと一緒に貪り食ってまた寝室に戻った。
布団に潜り込んでみても、眠れてはいないはずなのになかなか眠りに逃げることが出来なかった。
頭の中を今見た光景がグルグルと渦巻いている。
俺の部屋の片付けとメシの用意。
あいつは一体何を考えているんだ
昨日あれだけ酷い目に遭ったっていうのに
無理やり開かれ傷を負ったた身体は今だって痛むはず
なのに、忙しい仕事が終わってからわざわざうちに来て俺の世話を焼くようなこと……
つづく