確かに付き合う気も無いのに彩花ちゃんに手を出したのは事実。
素行不良は認める。
だけど、よりによって常務の孫だったとは…
俺の噂は余りにも広がり過ぎていて、俺に近づいて来るのは同類ばっかりだと思っていた。
まさか、こんなヤバイ相手だったなんて。
何にしてもしくじったことには変わりがない。
なす術もなく佐々塚常務の役員室を出て営業部に戻ると、俺が入った途端に静まりかえる室内。
みんなが素知らぬふりで、それでもチラチラとこっちを伺っている。
もう、情報が回っているのか?
俺はそのまま鞄を持って営業部を出た。
誰も俺に声をかけて来ることはなかった。
あんまりにも急な事で、頭は混乱してる。
混乱はしてるけど、こうなった以上俺はあの会社を辞めることになるんだろう。
俺の本質がどんなであれ、仕事には真摯に取り組んで来た。会社の利益にだって少なからず貢献して来たつもりだ。
それが、こんな事でお払い箱になるなんて。
こんな事……
当事者にはそうじゃ無くたって、あの大企業にとってはこんな事、のはずなんだ。
まったくの私怨で会社の利益になる人間をバッサリと切り捨てる。
佐々塚常務の権力と俺の能力を秤にかけたら、その差は歴然で……
結局、どれ程力を尽くしたと思っても、俺なんていなくたって会社には何の損失にもならない。
おれの価値なんてそんなもんなんだ。
家の鍵を開けソファに鞄を投げるとそのままリビングを通り過ぎベットに倒れ込んだ。
なんだか、全てが馬鹿馬鹿しくなって来た。
枕に突っ伏しているとポケットの中で携帯が鳴った。
ー懇親会終わったよ。これから行っていい?ー
何も知らないニノからのメッセージ。
ーごめん今日はもう寝るからー
それに短く答えて携帯をベッドの下に投げた。
今は誰にも会いたくなかった。
ニノでさえも……
つづく