そのまま揺らされる、されるがままの身体。
俺に没頭して必死な雅紀の姿を下から見上げる。


ニノの言ったことは本当だった
怖くて怖くて踏み出せなかった一歩
踏み出してみればこんなにも幸福に満たされてる
怖気付いていた日々が惜しいほどに
ひとつになれたことがこんなにも嬉しい


「こんな時になんで冷静な顔してんの。
もう、俺自信無くしちゃうよ」


どんな顔をしていたのか、雅紀が少しだけ動きを緩めて自嘲めいたことを言う。


「そうじゃなくて
幸せだなぁって、浸ってた」

「だから、それは後で。
はい、今はこっちに集中してね」


雅紀は片方の唇を少しだけ上げて、そのまま俺の唇を塞いだ。


息も出来ないほどの深い口づけ。
と同時に再開される抽 送。
そして前への刺激。


一度に押し寄せる快感の波は途端に俺から思考を奪っていく。
その波は俺を飲み込み、その中で俺は掻き回され上下も左右も分からなくなり、ただ攫われ揉まれ深く深く引き摺り込まれて行った。







気が付けばあんなに激しかった波は静かに凪いでいて、穏やかに聞こえるさざ波は風に揺れる葉擦れの音?


どうやら俺は意識を飛ばしたらしい。
外はもう明るくなっていて、雅紀が後始末をしてくれたんだろう、何も身に付けていない身体は綺麗に整えられていた。


「身体、大丈夫?
ごめん、初めてだったのに。
ちょっとやり過ぎた」


やっぱり寝起きの雅紀が近く顔を寄せて耳元で囁く。
ごめんと言う割にはその顔には幸福そうな笑みが浮かんでいる。
俺とこうなったことで雅紀が幸せを感じてくれているなら、それは俺にとっても嬉しいことで。


俺は雅紀に笑みを返すと、掛けていたブランケットを羽織ってベッドを降りた。


縁側に出てサッシを開ける。
今日も靄がかかっていて視界は真っ白。
山中ということもあって、真夏なのに朝の風は涼しい。その風が山肌を駆け上がって入ってくる。


立ったまま外を見ていると、冷えた背中に温もり。
雅紀がブランケットの中に潜り込んで来たんだ。
二人とも裸のままブランケットに包まって、暫くの間言葉も交わさずに白い世界を見ていた。


すると、目の前を覆っていた靄がゆっくりと晴れてゆく。
少しづつ開けてくる視界。
靄の先には木々の緑に麓の街の屋根瓦。
所々白い波飛沫を立てる海の青にその上に広がる真夏の空。


「ニノの言った通りだったな」

「ニノが?なんて?」

「今は今しかないって。
動かない後悔より前に進んで後悔した方がいいって」

「後悔する前提なの?」

「ふふっ、俺が尻込みして動けないでいたから。
だけど、進んでみたその先にこんなにも満ち足りた世界があるなんてね……」


後ろから俺に回された腕にそっと寄り掛かる。


「……初めてが雅紀で良かった」


筋肉質なその温もりに頬ずりすると、くふふと独特の笑い声。


「初めてだけじゃなく、これからずっとの予定だから」


耳元の囁き声と俺を見詰める思いの外真剣な瞳。
そんな雅紀に気恥ずかしくなりながらも


「そうだといいな」


ブランケットごと俺を包む雅紀の手に俺の手を添えて、そう答えていた。
















おわり