眼下に青い海を臨む山の中腹
観光地に近い立地も相まって
レストランcousin'sは今日もありがたいことに大盛況だった。
「潤さん、今日も美味しかったわ」
「ありがとうございます。幸田様」
「最近ね、推しに会えなくてちょっと寂しかったの。でもここに来れば潤さんに会えるから。
あっ、連れてきたの初めてだったわよね。
娘です」
常連のお客様の後ろには大学生くらいのお嬢さん。
こちらの会話が聞こえていないかのように一点を見つめる瞳。
「なんだかね、ニノさんに一目惚れみたいなの」
ご自身が推し活を楽しむ幸田様。
娘の一目惚れが恋愛のそれではないとわかっているようで、厨房奥に向けるキラキラとした眼差しを微笑ましく見詰める。
うちもホストクラブではないし、従業員のルックスで売っているわけではない。
お客様との本気の色恋沙汰は正直勘弁してもらいたいところだが、そう言うことならと
「ニノ!」
厨房に向かって声をかけると
顔だけこっちに向けてペコリと頭を下げる。
なんとも無愛想でこっちが焦る。
でも、彼女にはそれで十分なようで、頬を染めて嬉しそうに笑顔を返していた。
「若い人たちは外に出ることも多いでしょ?
これからたくさんお友達連れて通ってくるわよ、きっと」
それはこちらも大歓迎。
お待ちしていますと恭しく頭を下げれば
「コウちゃん、俺はぁ?」
従業員に有るまじき馴れ馴れしさでお客様に近寄る、オレンジ色の髪。
一見、傍若無人な振る舞いも生来の人懐っこさのせいか、クレームがつくこともなくお客様に可愛がられている。
軽薄に見える振る舞いも多いけど、実は頭が切れて何でもそつなく熟す器用な奴。
「うふふっ、フウマくん目当てのお客さんだってたくさんいるでしょ?
わたしだってフウマくんに会えるの楽しみにしてるのよ。
もちろん、潤さんの次にね」
「やっぱりオーナーかぁ」
下げた皿を両手に仰反る姿も愛嬌があって、あちこちから笑い声が上がった。
今ではムロくん以上のうちのムードメーカーだ。
つづく