ふあぁ〜
出勤時、たまたま一人だったのをいい事に、俺はエレベーターの中で大あくびをした。
営業部のある階へ着くまでの束の間の時間。
ついでに自分で肩を揉んで首をコキコキと鳴らす。
完全に寝不足だ。
昨夜玲美ちゃんの部屋で……
まぁ、やることやったせいもあるけど、運動して良く眠れるかと思ったのに、何だか眠れなくて…
エッチ自体も、なんか…
つまんないっていうか、燃えないっていうか。
以前はこんなことなかったのになぁ。
だるい身体を引き摺って営業部のドアを開けると、俺のデスクを陣取る寝不足の目には眩しすぎる美形。
「……どうしたの?」
寝ぼけ眼の俺とは対照的な、戦闘モードの松潤。
美形が睨むと余計に怖いって前にも言わなかったっけ?
「今夜、空いてるか?」
始業前の営業部。
周囲を配慮してしての静かな声。
だけど、それが余計に凄みを増して、俺は思わず一歩後ろに下がった。
「……う、うん」
「じゃあ、ここで待ってる」
会社の近くの店のカードを置いて、そのまま俺を見ることもなくさっさと出て行った。
……怒ってる?よなぁ
松潤が怒る理由……まあ、わからなくはないけど
仕事終わり、言われた通りに指定された店の敷居を跨ぐ。
ここはいつも行く居酒屋とは違ってそこそこ高級店で、だけど何度かは来たことがある。
「待ち合わせてるんですけど」
すると、中居さんは俺が名乗る前に、相葉様ですねとお辞儀をされて
「お連れ様がお待ちです。こちらへどうぞ」
と、先に立って歩き始めた。
案内された個室で、松潤はテーブルに両肘をつき、組んだ両手の上に顎を乗せて、身じろぎひとつしないで座っていた。
視線だけを俺に寄越すとそのまま向かい側に手を差し出す。
そこに座れってことね。
そのとおりに俺が着席すると
「何にする?」
いついかなる時も段取りを外さない律儀な男。
「松潤、頼んであるんじゃないの?」
「まあ、ざっとは」
「それでいいよ。俺特別ないし」
俺が答えると、入り口に控えている中居さんに
「じゃあ、さっきので。
一度に持ってきてもらえます?」
淀みなく注文を済ますと、綺麗にお辞儀をして出て行く中居さんを見送り、お疲れ、と俺のグラスにビールを注いだ。
つづく