思えば昨夜は飯もまともに食べてなかった。
きっと目が覚めたニノは腹ペコなはず。
それもこれも、いい歳して我慢が出来なかった俺のせいだ。


なんか、いろいろ悪いことしたなぁ。
頭ではそんなこと思っても、昨夜のニノの姿を思い出してニヤニヤしている俺はきっと反省なんかしていない。


せめてニノが起きたらすぐに食べられるように、朝飯の準備だけでもしておこうと冷蔵庫を開けた。








味噌汁と焼き魚の匂いが辺りに漂い始めた頃、カチャリと寝室のドアが開いて、そろそろとニノが顔を出した。
歩き方がおかしいのは、昨夜のダメージが残ってるから?


「おはよ。身体、大丈夫?」


アイランド型のキッチンカウンターから声を掛けると、恥ずかしそうに目線だけを俺に向けて


「おはよう、着替えありがと。
あの……まだ、なんか、挟まってるような、感じがするんだけど……」


頬を染めてそんなことを言うニノは、それでも口元には笑みが浮かんでいて、ごめんと謝る俺にふるふると首を振った。 


「どこか、痛いところは?」

「痛くはない、けど…恥ずかしい、ね?」


くふふっ、情事の後にこんなに初々しい反応する子って初めてだ。
ニノが初体験だったせいもあるんだろうけど。


「そこのソファに座って?ゆっくりね。
朝飯そっちに持って行くから。腹、減ってるでしょ?」


痛みはないと言うけど、ダイニングの硬いイスに座らせるのは忍びなくて、リビングに朝食の用意をした。


「…そう言えばお腹ペコペコだ」


何でだろう?って首を傾げるけど、昨夜俺に店から引っ張りだ出されてまともに食ってないの忘れてるのかな。





「……ねぇ、部屋に犬と一緒に写ってる写真があったね。飼ってたの?」


俺に促されるまま、そろそろとソファに腰掛けたニノが新しい発見をしたと目を輝かせる。


「ああ、あれ?
中学の時にね、雨の中に捨てられてたのを拾ったの。それからはずっと一緒だった。
だけど、もう、5年になるかな、病気で死んじゃった」

「そうなんだ……
賢そうな犬だね。名前は?」

「カイト。雑種だけど、凄く頭が良くて優しい犬だったよ」


ここしばらく思い出すこともなかったのに、ニノと話していたらカイトとの思い出が次々と甦ってきた。
カイトとは、楽しい時も、辛い時もずっと一緒だった。
一人っ子の俺にとっては弟みたいな存在。


「そうなんだ…」


病気になって死んだカイトのことを悼んでくれてるのか、ニノが顔を歪ませた。


ずっと俺を支えてくれたカイト。
本当に、楽しい時も辛い時もずっと一緒で…
もう少し長生きしてくれたら……


今の中途半端な俺を見たら、カイトはきっと怒るだろうな。













つづく