今日は営業部からの外回りだから会議室に行けなくてちょっと残念。
しかも、最近は一日に一回はニノの顔が見たいなぁ、なんて思っちゃうんだから、俺もだいぶニノに絆されて来ちゃったのかなぁ。


営業先への資料チェックをしていると、側のデスクが慌ただしい。
見れば営業事務の女の子がバタバタしてる。


「有吉さん、どうしたの?」


声をかけると半べその顔が俺を仰ぎ見た。


「いえ……
あの…課長に出す書類なんですけど、ミスを見落としてて……もう時間が…」

「あー、あの課長時間にうるさいから…」


しかもパワハラもセクハラの気もある。
弱みなんか掴まれたら後が大変そう。


「どのくらいあれば直せる?」

「30分あれば……」

「わかった。
課長には上手く言っておいてあげるから、早く直しちゃいな」


ありがとうございます。
と深々と頭を下げてパソコンに齧り付く姿を背に営業部を出た。


外回りの前に寄り道が増えたけど、日頃から上司には覚えが目出度いからね。角を立たずに収める自信がある。
何よりあの感謝の眼差しが気持ちいいよね。
また株上げちゃったかなぁ。
俺はいい人なんかじゃあないから、人助けも自分のため。






課長を丸め込んで30分の猶予を取り付けて、自社ビルのエントランスを出る。
うーん日差しが気持ちいい。
何だか気分がいいから、帰りにニノを飯に誘っちゃおうかなぁ。


「相葉さん」


角を曲がって路地に入ったところで聞き慣れた高い声に呼び止められた。


「…玲美ちゃん、どうしたの?勤務時間中でしょ」

「相葉さんが有吉さんに優しくしてる所見ちゃったから、妬けちゃって化粧室って言って出てきちゃった」


素早く間合いを詰めて俺の腕に置かれた、綺麗にネイルの施された細い指。


「俺はみんなに優しいじゃん。
玲美ちゃんが妬くなんて珍しいね」

「最近声かけてくれないから、私はもう飽きられちゃったのかと思って」


拗ねたような言葉とは裏腹に耳元で囁く吐息混じりの紅い唇。


そんな男を誘う手管も上手に熟す、俺と同類の女の子。


「そんなことないよ。
今、プロジェクトと本業の掛け持ちで、忙しくってさ」

「ホントに?
男の人の忙しいは逃げるための口実って言うけど?」


別に君だって俺一人ってわけじゃないじゃん
遊びたいなら他の男を誘えばいいのに
心の中で吐く毒は決して面には出さない


「もう少ししたら落ち着くから。ねっ?」


周りから見えないように唇を掠めてやれば、やっと納得したみたいで戻っていった。









つづく








19飛ばして20話上げちゃいましたΣ(・□・;)
ご指摘くださった方ありがとうございました
m(__)m