大野さんと櫻井課長の話を聞いている時は優しい笑顔だったのに………
櫻井課長は身内だから別として、松本さんの大野さんと俺とのこの違いはなんなの?
俺、早速なんかやらかした?
……覚えはないけど。


「……おはうございます」


返した笑顔が引きつった。


せっかく美人なんだけどなぁ
出来れば一度お相手を願いたいくらいなんだけど
敵意を向ける相手をわざわざ落としてまではねぇ
残念だなぁ


君子危うきに近寄らず。
然り気無く松本さんを避けて大野さんと櫻井課長の側へ。


「櫻井課長も大野さんも早いですね」


かけた言葉に二人の笑顔が返ってきた。


「今、大野さんとも話してたんだけど、相葉くんも課長はなしにして。
だいたいこんな肩書きは対外向けの呼称で、うちの会社じゃあ意味が無いんだよ。何たって頭数が少ないからね、みんなが何でもやらないとやっていけない」


カラカラと笑う姿も爽やかだけど、その笑顔の中に仕事への自信が漲っているのは間違いない。
こんな人も雑用やってるんだ。
ベンチャーってそう言うものなんだと改めて認識する。
大変そうだけど、うちよりよっぽど風通しは良さそう。


「わかりました櫻井さん。
早速ですけど、俺、今日は外回りの予定が入ってまして」

「聞いてるよ。
相葉くんは三友の営業の一番星なんだって?」

「一番星?何ですかそれ」

「そちらの部長や課長が言ってたんだよ。
エースって意味じゃない?」

だったらエースでいいのに。
おじさん達は頭も硬いけど、表現も古いんだよ。


「相葉くん、現場の意見を聞きたいから、現状の改善点やアイデアがあったらまとめておいてくれると嬉しいな」

「わかりました。
じゃあ、行ってきます」


出来るだけ松本さんの側に寄らないように、それでも会釈だけはして出口へと急いだ。
相変わらず冷ややかな視線を背中に浴びながら。


ドアを開けると
「うわっ!!」


今まさに入ってこようとする人とぶつかりそうになった。


「ごめんなさいっ!……あっ、おはようございます」


正面衝突を避けるために後ろへと飛び退いてビックリ顔で俺を見上げる彼。
相手が俺だと気づいて一瞬はにかんだ後に零れるような笑顔を見せた。










つづく