ビッターン!!!!
「痛ってぇ…何すんの!」
力一杯のビンタを貰って目から星が出た。左の頬っぺたは手で押さえてもジンジンと痛む。
「何すんのはこっちのセリフよ!
あんた私と付き合ってるくせに、秘書課の佐々塚さんにも手付けたでしょ!!
二股なんて、許せない!!!」
頭から湯気が出る勢いで俺を睨み上げる顔はまるで般若のよう。可愛い顔が台無しだ。
「ん~二股も何も……
俺、いつから君と付き合ってるの?
俺は会いたい娘と会ってるだけだよ?」
「酷い!
相葉さん、私に好きだよって言ったじゃない!
仕事帰りに食事に行ったし、休みの日のデートだって……
………それに、ベッド……だって………
私………本気だったのに……」
あ~あ、帰宅ラッシュの駅前でそんな爆弾発言したら君が変な目で見られるよ。
「可愛い娘はみんな好きだよ。
だけど、付き合おうとは言ってない。
俺はその時が楽しければそれでいいの。
君の本気は知らないよ」
「最っ低!!
二度とあんたの顔なんて見たくない!
さようなら!!」
そう吐き捨てると、湯気を上げたまんま大股で俺の前から去っていった。
でも、君うちの会社の受付だからさ、明日も顔を合わせることになるんだよ。
それにしても、見た目より力があるんだな。
頬っぺたにはきっとキレイな手形が付いている。
失敗したなぁ。
あの娘あんなにマジになる娘だったんだ。
見た目派手だし遊んでそうだったから、ちょうどいいと思ったのになぁ。
まあ、こんな場面も初めてじゃあないし、別にいいんだけど。
俺はポケットから携帯を取り出した。
「もしもし…夏菜ちゃん?
俺、ねぇこれから行っていい?
………うん、じゃあ後でね」
これで今夜の空白の時間が埋まった。
暖めてくれる人も決まった。
マジな恋愛なんて面倒なだけ。
楽しく過ごして、気持ちいいことして
人間関係のいいとこ取り、それでいいじゃん。
俺は電話の主の家に行くために駅に背を向けた。
つづく