「はぁ、やっと着いた」


飛行機のタッチダウンの軽い衝撃にやっと実感が湧いてきた。


自分で立ち上げた会社ではあるけど、とっくに会長職に退いたっていうのに、俺じゃないと先方が納得しないと泣きつかれて渋々承諾した海外行きだった。


たかが一週間、されど一週間。
あなたに会えない一週間は俺には耐え難い長さだった。


俺とは違って、あなたはいつもと同じ様に日常を送って、きっと今も轆轤に向かっているんだろう。


そんなあなたの元に早く帰りたくて、荷物を引いて歩く足取りも自ずと速くなる。


最近はめっきり着ることもなくなったハイブランドのスーツを身に纏ったまま、空港の駐車場に停めてあった軽トラに乗り込んだ。


つくづく今日と言う日に間に合って良かったとほっと息をつく。


それでもこれからが今日のメインイベントと浮き立つ心と共にアクセルを踏み込んだ。

おっといけない。
こんな所でアクシデントでもあったら帰るのが遅くなってしまう。
ここは落ち着いて冷静に、安全第一。
とにかく一刻も早くあなたの元に帰る為に全力を尽くすのみ。







街を抜け、幹線道路から外れ、どんどん狭くなる山道を登り、見慣れた古びた家屋を目にして生まれる安らぎ。
どんな不便な場所だろうが、どんなボロ家だろうがそこにあなたがいれば俺には天国。


大急ぎで車を降り、がたつく引戸を開けた。


「ただいまぁ。智くん?」








返事が無い。


工房にいるんだろうか?
そう言えば、そろそろ新作に取り掛かると言っていた。
そうなれば時間も寝食も忘れてしまうあなたのことだ、俺のことだって意識の彼方に飛んで行ってしまっているのだろう。
今日俺が帰って来るのだってきっと忘れているに違いない。


それがあなたで、そんなあなたが好きなんだ。
だけど、一週間寂しさに耐え仕事をやり遂げたご褒美として、陰からそっとあなたの様子を見ることくらいは許して欲しい。


俺は一度上がった上り框を降りて工房に向かうことにした。















つづく