それから約束の締め切りの日まで、俺は落ち着かない日を過ごした。
仕事をしていても二宮の顔がちらついて
今頃どうしているだろう
上手くやれているだろうか
先生には慣れた場所。
毎回あの部屋に入ってしまえば、何とか書き上げる。
だけど、黙って待っていれば書いてくれるってわけでもない。
二宮は大丈夫か
困ってはいないか
あいつのことを信じてはいても心配事は尽きなくて、頭の中は二宮の泣きそうな顔が浮かんでは消える。
そんなだから、自分の仕事なんて半分上の空で、それでもミスをしない俺を誰か誉めて欲しいもんだ。
そして約束の日。
俺は残業をするフリをしていつまでも編集部のフロアに居残っていた。
夜も深くなってくればさすがに夜討ち朝駆けの編集者達も一人減り二人減り、最後に俺と二人になった克己さんが
「締め切り、今日だろ?
俺が出迎えようかと思ってたんだけど
松潤がいるなら、俺は遠慮しとくかな。
後はよろしくう~」
意味深に語尾を伸ばして、経費節減とか言ってご丁寧に電気まで消して帰って行った。
もうすぐ日付が変わる
二宮は……来るだろうか
井筒先生の原稿が校了に回されたことは、連絡を受けて知っていた。
だけど、井筒先生が寝ていないのと同じに二宮だって寝ている暇なんて無かったはず。
ミッションが終わったなら、一刻も早く家に帰って寝たいだろう。
あの日、俺は二宮に編集部で待っていると言った。
だけど……
それだけであいつがわざわざここまで来る理由になるのか
これまでの二宮の態度には明らかに俺への好意が見える
それでも疲れきった体にムチ打って俺の言葉に答える程の気持ちがあるのか
俺には自信がない
それでも、どうせ二宮の顔を見るまでは帰れないんだから少しは身を入れて仕事をしようと、今一番の懸案事項のファイルを立ち上げた。
つづく