「ここは何処なの?
先生はどうしていなくなったの?」
エレベーターの中で二宮が矢継ぎ早に聞いてくる。
俺は二宮が編集長から渡された引き継ぎ書にパラパラと目を通していった。
何だ!この引き継ぎ書は!!
一番大事なことが書いてないじゃないか!!!
これじゃあ二宮が慌てふためくのも無理はない。
克己のやつ~~!覚えてろよ!!
俺の大事な二宮を泣かせやがって~!!
チンッ!
俺がどんなに怒り狂ってても、今それを発散する術はなく、エレベーターは容赦なく目的の階に着く。
とにかく今は時間がない。
俺は不安そうに俺を見上げる二宮を安心させるように滑りのいい髪に指を通してその頭をクシャッと撫でた。
戸惑いと不安と俺への信頼に満ちたその表情に、この場で抱きすくめたい衝動を必死で抑えて扉の外に出た。
「潤く~ん、久しぶり~」
「お久しぶりです」
チャイムを押して出て来た人に会釈と共に挨拶をする。
見た目や雰囲気に騙される人が多いが、彩華さんはメチャクチャ頭が切れる。
場を読むセンスもピカイチだから物事がさくさくと進んでありがたい。
未だに事態が飲み込めずに目を白黒させている二宮を尻目に、スゴスゴと奥から出て来たショッキングピンクのオヤジの腕をガシッと押さえて、来た道を戻って行った。
別れ際、彩華さんと目が合うと、意味深にニッと笑った後でチラリと二宮を見る。
はぁっ、そんな所まで察しなくてもいいのに。
これは彩華さんへの報告義務が生じてしまった。
まだ、何も始まっていない俺と二宮の関係をどう説明すればいいのか。
少なくとも、俺の気持ちだけは報告しないと納得して貰えないだろうなぁ。
つづく