「雨、止みそうにないね」
「そうね」
窓ガラスを伝う雨粒とその奥の灰色の空を見上げて呟く俺と、ひとん家のソファーに胡座をかいて手元の小さな画面を見詰めたまま答えるお前。
たまたま今日が休みだと言ったら、自分もたまたま休みだからとやって来た。
手土産にとコンビニのジュースをぶら下げて。
ビールじゃないの?と聞けば
何だか飲みたくなってとガサガサと鳴る袋を俺に付き出してそっぽを向く。
中身はJr.の頃帰り道でよく買って飲んだ懐かしい味。
今日の休みがたまたまだったのかはわからないけど、今日うちに来たのと土産がこれなのはたまたまじゃあないよね。
長い間ずっと一緒にいて、思い出なんて数えきれないくらいたくさんあるのに、今でもこんな小さな一歩を大事にしてくれる。
そんな事をお前に言えば
「この日がなかったら出会ってないんだから小さくはない」
と言い返されそうだから言葉にはしないけど。
胡座をかいてもちんまりしてるお前の隣に腰を下ろして貰ったペットボトルのキャップを開けた。
今はもう甘ったるく感じる懐かしい味が喉を通って、その頃の思い出がスライドのように頭の中によみがえる。
少しの間目を閉じてその情景に浸った後で、相変わらず の薄暗い空を見上げた。
「早く止むといいね」
「そうね」
そうして俺は雨音とお前の携帯から流れる小さな機械音をBGMに読みかけの文庫本を手に取った。
こんな記念日も悪くない。
うん、全然悪くない。
おわり