修羅場をひとつ越えた編集部は珍しく平穏で、
デスクワークをしながら意識は自然と奥のブースへ飛ぶ。


松本さんはパソコンを前に打ち合わせ中らしい。


その横顔は相変わらずキレイで。
人に真っ直ぐに向き合う瞳はあくまでも真摯。


あ、笑った。


整いすぎて、ともすると冷たく見られることもあるけど、笑った顔はむちゃくちゃ可愛くて時には幼く見えることもあって……
年下のオレがこんな風に見てるなんてバレたら怒られるかもしれないけど。


つくづく魅力的な人だよなぁ。


松本さんへの気持ちを自覚してからずっと考えている
オレは松本さんとどうなりたいのか
今までだって松本さんはずっと傍にいてくれた
困ったときも、そうじゃない時だって
オレはそれで満足だったし、今だって不満なんてない
じゃあ、親愛と恋愛の違いって何だろう
独占欲?
肉体的な触れ合い?
オレは松本さんにそれを求めているのか?


はぁ~わからない








そんなオレの指はすっかり止まっていたらしい。


「よう、ニノ終ったか?」


後ろから声がしてビクッと肩が跳ねた。
振り返ると克ちゃんが覗き込んでいて、反射的にパソコンを閉じた。
別に見られて困る物なんてなかったけど。


「なぁ、終ったんならメシ行こうぜ」


この間断った後もこうやってしつこく誘ってくる。
いい加減面倒くさくなって、ただメシならいいかぁと返事をしようとした時、トンッとデスクを叩く長い指。
見上げると鞄を持った松本さんが目の前で。


「行くぞ」


出口を向いたまま言うから


「うん」


そそくさと帰り支度を始めた。


「なんだよー
オレの誘いには全然乗らないくせにー
松本には二つ返事かよー」


克ちゃんがぶうたれてる。


「克実さんとオレじゃ違って当然」

「ふふっ、克ちゃんはまた今度ね」


恨めしそうな顔に手を振ってオレは松本さんの背中を追った。


















つづく