都内をしばらく走って松本さんが車を入れたのは高級ホテルの駐車場だった。
慣れた様子でフロントから鍵を受けとると、オレと井筒先生を従えてエレベーターに乗り込んだ。
「部屋…抑えてたの?」
先生が恨めしそうに呟く。
「ええ、お迎えに行く前に。
お陰様で慣れてますから」
松本さんのトゲのある返事に先生はグッと黙り込んでしまった。
エレベーターを降りて開けたドアの先は
「スイート?……すげぇ」
初めて見る豪華な室内にキョロキョロと辺りを見回すオレに松本さんが
「先生にはここで缶詰めになって貰うから」
そう言って、オレの持っていた荷物を先生に押し付けた。
「いいですか?3日です!
3日後の午後3時。それ以上は1秒も待ちませんからね!」
グッと先生に顔を寄せ目を剥いたまま見下ろした。
美形が睨むと余計に怖い。
先生は松本さんの迫力に圧されて何も言えずに、荷物を抱えてすごすごと寝室だろうか奥の部屋に消えた。
それを見送って松本さんはドカッとソファーに腰を下ろす。
このソファーがまた豪華でフカフカでまるでベッドみたい。
そのソファーの自分の隣をポンポンと叩く松本さん。
促されるままにオレは松本さんの隣に座った。
ふうっとひとつ息をついてオレを見る。
「状況は飲み込めた?」
「わかんないよっ!」
パニックになって松本さんに助けを求めたのはオレだけど、何の説明もなくここまで連れてこられて。
いったい何が起きてるのか。
さっきの会話で、井筒先生があと3日で原稿を書き上げるために奥の部屋に行ったのはわかる。だけど、それ以外は、さっぱりだ。
何でいきなり先生が邸宅から消えたのか
その先生が何であのマンションにいたのか
それを松本さんが知ってるのは何故か
大体、締め切りは今日のはずなのにあと3日ってどういうこと?
オレにはわからないことだらけだ。
つづく