カランカラン~!
「相葉さーん、聞いて欲しい事がある……んだ……けど?
あれっ?相葉さん、いないの?」
カウベルを鳴らして古い扉を開けた先に期待した人はいなくて、代わりにいたのは
オレより小っこくて、エプロン姿がよく似合ってる、笑ったらさぞかし可愛いだろう青年が、仏頂面で皿を拭きながらジロリとこっちを睨んでいた。
「…相葉さんは2階です。
お仕事ですか?」
お前、いくら商売っ毛のない店だとしても、カウンターにいてその顔はないと思うぞ。
「……仕事、だよ!
じゃあ2階に行こうかな」
「行きますか?
櫻井さんもいますけど」
「翔さんまだ出掛けてないんだ。
じゃあ、止めとく。
ただでも暑いのに、イチャイチャ見せつけられたくない。
知念は今日はバイトに入るの早いじゃん」
「授業、午前だけだったんで。
………先生が昼食べに来るんですよ」
「ああ、大野さん待ち。
オレも腹へったなぁ………どうせだから
ハンバーグちょうだい」
「………………」
だから、いちいち睨むなよ。
「……ハンバーグ、ですね。
ちょっとお待ち下さい」
オーダーをしたってことは客だから、無愛想はそのままだけど、あからさまにイヤそうだけど、それでもオレの昼飯の準備を始めた。
オレにはやたらと当たりの強いこの男は、大学の後輩でここのバイト。
何でこんな稼げもしない所でバイトをしているかっていうと、ここには大野さんが来るから。
みんなが言うところの真面目なこいつは、真面目に大野さんに恋をして真面目にアタック中。
だもんで、自分と大して年も変わらないくせに、大野さんと仲の良いオレの事が真面目に鬱陶しいらしい。
大野さんが入り浸っているって理由でバイト先を決め、いずれは大野さんのゼミに入ると息巻く、ヘタすりゃストーカーのようにも見えるこの男を大野さん自身が可愛がっているから、周りは静観するしかない。
まあ、こいつの気持ちには応える気はないらしいけど。
今のところはね。
つづく