会社に戻って、相葉さんの原稿をひたすらパソコンに打ち込んで行く。



本来これはオレの仕事じゃない。
相葉さんがパソコンを覚えてさえくれれば……
なんて思っても仕方がないんだけど。
だってあの人、キーボード打ってる間に話しを忘れるって言うんだもん。


いいですよ。
オレだって、相葉さんに良いもの書いて貰えるなら、このくらい喜んでやらせて貰いますよ。
ついでにチェックも出来るしね。


そう言えばこの作業、この間まで松本さんがやってたんだよなぁ……
他にも平行して何人かの作家さんの担当やって、オレたち新人の指導もして……


超人だな……








夜も更けてきて、このフロアに残ってるのはオレと松本さんだけになった。


「終わったぁー」


相葉さんの原稿の他にも、今日のノルマを終わらせてイスの背もたれに寄りかかって伸びをした。
その流れでチラッと見た松さんと目が合って


「…じゃあ帰るか」


松本さんがパタンとパソコンを閉じて立ち上がった。


「もしかして、待っててくれた?」

「いや、やることは山程あるからな」

「じゃあもう帰っちゃっていいの?」

「四の五の言わない!帰るぞ!!
あっ、飯食ってくか?」

「奢ってくれるの?」

「お前、俺と飯食って金払ったことないだろ!?
この時間だと……」

「あ、あそこにしようよ。
お味噌ラーメンの美味いところ!」

「お前、このくそ暑いのに味噌ラーメン食うの?
俺は断然冷やし中華だな。そうと決まれば
行くぞ!」


松本さんがジャケットを肩に掛ける。
ただそれだけなのに、なんでこんなにカッコいいんだろう。


「おいっ!
俺に見とれてぼうっとしてると置いてくぞ」


ニヤリと笑われて我に返った。


「べ、べつに見とれてたわけじゃないよっ!
自信過剰なんじゃないの?」


慌ててカバンを抱えてイスを蹴った。


「過剰じゃないさ。自信はあるけどな!」

「うわっ!それを自信過剰って言うんだよ」


って、誤魔化してはみたけどさ、松本さんを見てたのは……間違いじゃないんだよなぁ。


まあ、万人の鑑賞に耐え得る美形ではあるし。
それだけじゃなくて、笑うと妙に可愛かったりして。
仕事も熱心だし、熱いだけじゃなくて実際すっごく出来るし。
編集者としてオレの目標だし。


出会った頃は恋敵だったせいもあって、邪魔だとさえ思ってたのに。


今は、尊敬してる。


だけど……


松本さんみたいになりたいとか、そういうんじゃあ
ないんだよなぁ……………













つづく